『あなたのランクはBです』
それを見た瞬間。言いようのない怒りと、乃々花に対する嫉妬心が膨らんでいく。
「私がBランクなわけないじゃない!乃々花がSランクなのに!」
同じ都内の有名女子大を卒業し、新卒で映画宣伝企画部に配属された私たち。ライバルではなかったが、常にお互いを意識する存在だった。
このとき、私は初めて「乃々花にだけは絶対負けたくない」という気持ちが、自分の中に存在していたことを知ったのだ。
「確かに乃々花は美人かもしれないけど…。上司や取引先からの人気は、私の方が上じゃない!」
ガックリと肩を落としながらソファに座り込み、Bランクの男たちを眺める。
彼らは地味なスーツに身を包み、ルックスも年収も中の上といったところだ。人を見た目や年収で判断しちゃいけない、とは思っているけれど…。ついつい嫌味を言わずにはいられない。
「私が、この人たちと同じランクだってこと?ありえないわ…」
メニューをクリックすると、マッチングすることはできないが、別のランクの男性も検索することができるようだ。私はザッとSランクの男性をチェックしてみた。
― うわ、見なければよかった。
そこにはBランクの男とは比べ物にならないほど、容姿の整った人たちが並んでいたのだった。
Bランクだったことがあまりにもショックで、あれからアプリを放置してしまっていた。しかし登録完了してから3日目の夜に、ある通知が届いたのだ。
『特別ご招待:Sランクのパーティーを見てみませんか?』
何かと思って調べてみると、新しく会員登録した女性限定でサービスをしているらしい。月に一度行われているSランク男女のパーティーを、オンライン上で覗き見できるようだ。
興味を持った私は、パソコンを立ち上げてURLをクリックする。
「なにこれ、すごい…!」
画面に映像が映し出された瞬間。私は体がカッと熱くなって、気持ちが異様なまでに高揚しているのを感じた。
大理石のテーブルにオードブルが並び、美男美女がドレスとタキシード姿でワインを手に談笑している。まるで、映画に出てくる舞踏会のワンシーンのようだ。
カメラがいくつも用意されていて、画面を切り替えるたびにSランクの男女が映し出される。そのとき私は、1人の男性に釘付けになった。
名札に『拓也』と書いてあるその男性は、切れ長の目に、弓なりの眉が特徴的な韓流スタータイプ。私は画面越しに、一目惚れしてしまった。
そのままパソコンを閉じてアプリを立ち上げると、Sランクの男性の中から、2時間かけて拓也を見つけ出したのだ。
しかし表示されている『マッチング不可』の文字に、肩を落とす。
「この人に、会ってみたい…」
私はすぐにGoogleで『About yourself Sランク』と検索し、ヒットした記事の中から、Sランクになる方法というページをクリックした。
それは男性ユーザーが書いた記事だったが、ブログの管理人は実際に3つの方法を用いて、CランクからSランクまで上がったという。
「えっ!こんな冴えない感じの人が、Sランクになれるんだ!」
管理人のプロフィールには、理工学部卒のエリートであるものの、30年間彼女ができなかったと書いてある。
Cランクだった頃の写真もモザイク付きで掲載されており、小太りで赤いダブダブのチェックシャツが、低ランクだった彼を物語っていた。
「僕もこの方法を試して、Sランクになれました!」
「Sランクの人と結婚しました!」
記事のコメント欄には、Sランクに到達した男女からの感謝の言葉が並んでいる。
そして私も、さっそくSランクになる方法を実行することにした。
この記事へのコメント
今回の展開は全く読めなくて面白かった!
似た物夫婦だね😂
生まれてくる子供はどんな容姿だったとしてもかわいいと思えることを祈る!