我が子に海外留学。
子どもを国立・公立・私立いずれの学校に通わせていても、高等教育に進む段階で一度はそんな選択肢を考える親も多いだろう。
社会が新型コロナ一色となり忘れがちだが、基本的な経済原理に変わりはない。
GAFAMはじめ、ビッグ・テックが世界経済の主導を握る。その足下では日々ユニコーン企業が出現するが、残念ながらメインとなる舞台は日本ではない。
周知のとおり日本の経済は先進国ながらも後塵を拝し、10年・20年先と言わずとも、数年で発展途上国に追い抜かれても何ら不思議はないのだ。
未来を見据えて「本気で我が子に生き残る力を与えたい」と思うなら、海外留学は選択肢として間違っていないだろう。
しかし、ご存知だろうか。
海外留学を志すのはいいが、近年の留学事情を理解せぬまま、多くの家庭が失敗の道を辿っていることを。
今回は渡航先をアメリカに絞り、我が子の「留学」をテーマに紹介する。
前回の記事はこちらから
せっかく国立の附属小に進学したのに…。“あえて公立中”へとドロップアウトした親子の深意
▽INDEX
1. 留学浪人の日々を送ったけれど…
2. アメリカの大学受験に「成功する人」と「失敗する人」の違い
3. 最低限、これだけは押さえておきたい!アメリカ受験のノウハウ
4. より良い条件で留学するための「裏技」教えます
留学浪人の日々を送ったけれど…
コングロマリット化する国内大手の重工業企業で、生え抜きの社員として幹部まで上り詰めた新海雄二さん(仮名、49歳)は部下にも慕われ、順風満帆だ。
唯一の悩みの種は、青山学院の経済学部に通う1人息子のこと。
「小学校受験で初等部に合格してからというもの、これまで内部進学という形で大学まで進んだ息子ですが…。入学早々に休学して、アメリカの大学に行きたいと言い出したのは3年前のことです」(新海さん)
しかも息子が口にした志望校は名門のイェール大学だった。さらにはMBAの資格を取得し、外資系コンサルとして働きたいと将来の夢を語る。
そのためには大学を休学し「受験するための勉強に集中したい!」と、熱い眼差しだったそうだ。
アメリカの大学受験ではSAT(Scholastic Assessment Test)やACT(American College Testing Program)といった、日本の大学入学共通テストのようなペーパー試験を受ける必要がある。
さらに日本人であれば、TOEFLもそれなりの点数が必要となるのだ。
息子は事前に留学に必要な情報を調べてきたようで、ようやく自ら示したやる気を前に、新海さんの喜びはひとしおだったという。
アメリカのトップ100以内の大学を卒業して就職した場合、初任給の平均年収は6万〜7万ドルと言われる。
ハーバード大学を卒業するともなると、初任給で9万ドル弱も夢ではない。
また大学院でマスターの資格をとれば1.2倍、さらにPhD(ドクター)の資格をとれば1.5倍と、学歴による収入格差は日本の比ではない。
親として否が応でも期待が高まるなか、新海さんの息子はSATで満点に近い点数を取り、TOEFLでも100点という結果でイェール大学の受験条件をクリアした。
そして意気揚々とイェール大学にアプライ(受験申請)したのは言うまでもないが、年が明けて合否サイトを開くなり空気は一転、意気消沈する。
結果は不合格。それでも新海さんの息子は海外留学を諦めず、留学浪人の日々を送っていたのだが…。
「諦めなかったのは良かったのですが、次に受けたいという大学は聞いたこともないところばかり。どうせならアイビー・リーグ(アメリカ名門8大学の総称)か、せめて大学ランキングの20位以内を目指してほしかった。
海外の名門大学を得意とする進学塾に通い、本気で取り組んではどうかと勧めるのですが、息子は聞く耳を持とうとしません」(同)
アメリカの大学となれば、学費や寮費といった費用に年間6万〜7万ドルは必要となる。負担は決して軽いものではなく、新海さんが親として口うるさく言いたくなる気持ちは、わからなくもない。
ある晩。痺れを切らした新海さんは息子を呼び止め、こう諭す。
「妥協は人を弱くする。楽な道ばかりを選ぶな、挑戦しろ!」
息子は何とも言えない表情のまま自室に籠り、以来、口を聞いていないという。
苦渋の末の新海さんの判断だったが、もしあなたが彼と同じ親の立場であればどう行動しただろうか。
ひとつ忠告をしておくと、海外留学は親の知識次第で子どもの人生を狂わせるのだ。
この記事へのコメント
日本とアメリカ、両方の大学を卒業した私は、親に感謝しかないです