2022.02.08
女たちのSNS事件簿 Vol.1「マッチングアプリと違うのは、その人の日常とか考え方とか、人間性の部分が浮き彫りになりやすいところ。アプリだと相手に良く見られようとして気取っちゃうけど、Twitterはもっと手軽に、思ったことをいつでもつぶやけるから」
私は「なるほど」と、深くうなずく。
「それに、相手のアカウントの“いいね”欄を見れば、思想や趣味嗜好なんかも垣間見ることができるし」
小百合は「ほら」と言いながら、適当なアカウントのいいね欄を見せてくる。
たしかに、マッチングアプリよりもTwitter婚活のほうが、会う前と会った後のイメージのギャップは少ないのかもしれない。
「実際の成功体験もあるし……私もTwitter婚活、やってみようかな」
新たな出会いへの期待感を胸に、残り少ないカフェオレを一気に飲み干した。
その日の夜、私はいくつかの婚活アカウントを参考に見て回り、早速Twitterアカウントを開設した。
アカウント名は『yuzuka@婚活垢』。写真は、ヘアサロンに行った日の後ろ姿を添付した。
マッチングアプリと違い、Twitterでは顔写真を掲載する人は少ない。私もそれに倣う形にしたが、せめて雰囲気だけは伝えられればと思ってのことだ。
次のステップは、自分のスペックをまとめた簡単なプロフィールを投稿し、そのツイートをトップに固定するようだ。早速、私もマネてプロフィールを作成する。
「性別:女」「年齢:28」「住所:都内」「学歴:大卒」「身長:160」「体型:痩せ型」「趣味:料理」「好きなタイプ:一緒にいて楽しい人」
そして、そのツイートにハッシュタグ「#Twitter婚活 #婚活垢 #婚活垢さんと繋がりたい」をつけて投稿した。
一旦これで様子をみてみようと、この日はプロフィール投稿だけにとどめて、Twitterの画面を閉じた。
◆
翌朝。眠い目をこすりながらスマホを開くと、Twitterの通知がずらりと並んでいた。
― すごい!“いいね”が100件以上きてる。DMもいっぱい届いてる!
喜びから、スマホを持つ手が小刻みに震えた。もともと、何げない自分の日常をつぶやく別のアカウントを持ってはいるが、いいね数はせいぜい3~5程度。ツイートにいいねがつかない日なんてざらにある。
こんなに多くのアクションをもらえるなんて…想像もつかなかった。
― もっともっと、いいね数を伸ばしたい!
“いいね”をたくさんもらうことへの快感を覚えた私は、それから毎日、婚活垢で投稿するようになった。
料理が趣味というのをアピールして、ビーフシチューやアクアパッツァなどの手作り料理を載せたり、愛用のDior、YSLなどのコスメを紹介したり。全身のコーディネート写真を載せたりもした。
しかし、プロフィール以降のツイートはあまりいいね数が伸びない。フォロワーも1週間で50人ほど増えたが、そこでストップしてしまった。
そして、最も大きな問題は…DMでやりとりをしている婚活男子が、どうもしっくりこないことだ。
プロフィールは申し分なく、ツイートも面白い。でも写真を交換すると、タイプではなくガッカリしてしまうことが多いのだ。こればかりは、仕方のないことなのだが。
こういった男性に共通するのは、フォロワー数の少なさ。
そこで、フォロワー数が4桁台と人気の男性婚活アカウントを見てみると、アイコンの写真の雰囲気、プロフィールの見せ方、日常的につぶやく内容、すべてにおいてハイスぺ感が漂い、自信がみなぎっていた。
フォロワー数が多いということは、女性から見て魅力的な要素が多いことの裏返しでもある。きっといい男に違いないと思った。
しかし、人気の男性婚活アカウントをフォローしても、フォローバックされないことがほとんど。フォローを返してもらえたとしても、DMの返事はもらえなかったりする。
人気の男性婚活アカウントは、フォロワー数の多い人気の女性婚活アカウントばかりフォローしているのが現実だ。
「お前程度のフォロワー数じゃ、俺と釣り合わない」と言われている気がして、なんだか悔しかった。
― フォロワー数を伸ばしたら、もっといい男性とマッチングできるかもしれない……。
そう思った私は、人気の女性婚活アカウントや、恋愛に関する発信をして1万人以上のフォロワーを持つ“アルファアカウント”を、片っ端からフォローした。そして、彼女たちのツイートから、多くの人に見てもらうためのコツを探る。
― なるほど。すでにバズってる恋愛ネタツイートに、引用リツイートで便乗してコメントするのがいいのね。Twitterのトレンドに入ってる男女絡みのワードを、積極的にツイートするのも効果ありそう!
早速、得た知識を取り入れながらツイートをしていく。
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