東京レストラン・ストーリー Vol.2

駐在帰りの商社マン31歳が忘れられない女。彼女から結婚を迫られて別れたものの…

外食が思うようにできなかった、2021年。

外で自由に食事ができる素晴らしさを、改めてかみ締める機会が多かったのではないだろうか。

レストランに一歩足を踏み入れれば、私たちの心は一気に華やぐ。

なぜならその瞬間、あなただけの大切なストーリーが始まるから。

これは東京のレストランを舞台にした、大人の男女のストーリー。

▶前回:東京レストラン・ストーリー:港区女子が一晩でハマった男。しかし2人の仲を引き裂こうとする影が…


Vol.2 慎之介(31歳)東京タワーみたいな恋をした


『ニューヨークグリル & バー』で、舞香は満足そうに微笑みながら、僕を見つめる。

大好きな彼女の視線に応えながら、ステーキを口に運んだ。ここの分厚いテンダーロインと付け合わせのマッシュポテトは、すごく僕の好みだ。

大きな窓の向こうに見える、温かなオレンジ色の光にふと目を奪われる。

―東京タワー。

東京タワーは僕の青春時代の象徴で、その時代を語るには、ある1人の女性のことを思い出さずにはいられない―。



それは、去年のこの時期にちょうど大ヒットした映画みたいに、平凡な、でもだからこそ一生に一度の恋だった。

激しく燃え上がることはしなかったけれど、僕の心をずっと温かく満たしてくれるような、そんな恋。

恋の相手は、真子。大学2年生から5年間付き合った。

彼女は東京タワーが見える夜景が好きで、学生時代、僕らはよく夜の芝公園を散歩した。

「本当、女子って夜景が好きだよな」

夜景を見に行くとき、僕は真子に連れられて仕方なく…というテイをとっていたけれど、実は僕もこのデートが嫌いじゃなかった。

「だって夜の東京タワーって、見るとワクワクしない?」

東京のど真ん中にそびえ立ち、オレンジ色の光を放つ東京タワー。本当は僕も東京タワーがすごく好きだった。

だけど、男がそんなこと言うのはどこか照れくさい。だから彼女への共感の言葉は伝えられなかった。

そんな言葉足らずな僕が原因だったのだろうか。それとも、もっと根本的なところに問題を抱えていたのだろうか。

今になってはもうわからないけれど、社会人になって驚くほどあっけなく破局してしまった。

別れの引き金となったのは、些細なことだった。

この記事へのコメント

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No Name
舞香は素敵な人だし、慎之介も真子も幸せな未来が見えるストーリーで良かった。
今回はレストランは料理より立地の出方だったけどそれも良いかな。
2022/01/16 05:2699+返信2件
No Name
私も5年位付き合い別れてしまった彼と、いつも夜景が綺麗なレストランに行ってたなぁと思い出しました。
最後、慎之介がよかったな、幸せになれよ。
と真子に心の中で語りかけたところ、すご〜くよかった。慎之介も舞香とお幸せに♡
2022/01/16 05:4063返信1件
No Name
ステキな話過ぎて号泣…
2022/01/16 05:2556
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