東京エアポケット Vol.2

仕事を休んだ女は、都心のホテルへと向かい…。平日昼間にだけ許される、婚約者にも秘密の時間

新たなチャプター


「新規プロモーションの件ですが、お待たせして申し訳ありませんでした。ぜひ私にやらせてください。頑張ります」

桃子がそう伝えると、部長は「それはよかった」と安堵の表情を見せた。そしてすぐさま、プロジェクトについて話し始める。

「では、明日にでもキックオフミーティングをしよう。メンバーには、私から声をかけておく」

「はい!」

仕事もプライベートも、新たなチャプターに突入だ。不安はある。だが今は、期待感のほうが大きかった。



1ヶ月後。

「もうダメ…。こんなときは“おひとりさまランチ”しかない!」

2時間に及ぶミーティングを終えた桃子は、疲れ果てていた。

新規プロモーションの件で、広告代理店となかなか厄介なトラブルが発生。連日対応に追われていた矢先、アシスタントの後輩が転職することになったのだ。

事件続きで、脳も身体もヘロヘロだ。気力を振り絞って急いでスケジュールを確認し、休暇を確保する。その足でレストランに予約を入れた。

「これでちょっと安心。頭の整理ができるわ…」

そして迎えた、休暇当日。死に物狂いで仕事を片付け、本日のレストラン『レ セゾン』へと向かう。

席につき、まずはシャンパンをゴクリ。

「ふぅー」

目をつぶって深呼吸すると、パニック状態だった心と頭が落ち着きを取り戻していく。

「さてと。問題を整理することにしますか」


食事を終えた桃子は、コーヒーを飲みながら、ふと考える。

女の人生は、岐路が多くて日々迷うものだ。キャリアや結婚、出産に子育て。次から次へと決断を迫られる。パニックに陥るのも無理はないだろう。

だが、よく考えずに即決したり周囲に流されてしまっては、いいことなどひとつもない。

そんなときに必要なのは、ゆったりと過ごす時間。自分はどうしたいのか?だけを考え、思考を整理する、大事なひとときだ。

そのためには忙しない日常から離れ、心身ともにリラックスすることが大切なのである。

「…なんとなく、方向性が見えてきたかも」

頭の中が整理された桃子は、会計をお願いした。

平日のランチタイム。

喧騒とは無縁の空間で、優雅な食事をいただきながら、ひとり頭の中を整理する。

これが、仕事にプライベートに忙しい桃子にとって、最高の“贅沢時間”なのだ。


▶前回:見栄を張ることに疲れた30歳OL。周囲にひた隠しにしていた“至福のご褒美”とは

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この記事へのコメント

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No Name
自分が桃子の立場だったら全く同じ選択をしたと思うので、すごく共感できました。
雅人も理解してくれてるみたいで何より。
前向きなお話はいいですね〜。
2021/10/20 05:3199+返信1件
No Name
美味しそうなお料理が出てきて、グルメ情報媒体らしくていいですね。
2021/10/20 05:4699返信3件
No Name
一度オーバーヒートしてしまったら、良き方向に前進できない訳だし、ヒステリックになって悪い方に転ぶよりは、一旦休憩するのすごくいいと思った。業種や職場環境にもよるけど、半休とれるなら、昼から飲むシャンパンは最後の癒し。
2021/10/20 05:3592返信5件
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