あのコはやめて Vol.9

婚約者の実家で目にした「ありえないモノ」とは?次々と暴かれる“自称お嬢様”の驚きの過去

疑惑の入学写真


その写真は、咲良が卒業した女子校の入学式のものだ。台紙には当時クラスに所属していた生徒の名前も掲載されている。

…見てみると、そこには見覚えのある名前があったのだ。

“杉田 真紀” 圭一の婚約者、真紀の名前だ。

― あれ?同姓同名かな…?

気になった誠は、その名前の位置にある女生徒の顔を見てみる。大きな瞳に黒く美しい髪。まだあどけないが、真紀の面影がある。

「この子、圭一の婚約者と同じ名前だ」

誠が何気なくつぶやくと、咲良もどれどれと身を乗り出した。

「へぇ…。そういえばそんな名前の子いたねえ。あまり覚えてないけど」

咲良はそのまま台紙を閉じてしまったが、誠の頭の中は疑問符でいっぱいだった。

真紀の実家は、確か鎌倉にあったはず。

そして、中学の頃はすでに彼女はパリに留学していたと言っていた。

― まさか真紀は、自身の経歴を偽っているのか?

実のところ彼女については、本人か圭一伝いでしか情報はない。つまり、誠の知る真紀はすべて自己申告なのだ。

もう彼らには関わらないと決心した途端、知ってしまった事実に、誠の心は揺らぐ。

「じゃあ。僕は、帰るよ」

咲良はそのまま滞在するということなので、誠はひとり彼女の家を後にし、東京へ戻ることにする。

誠は、どうしても早く帰りたかった。嫌な予感がしたからだ。


「お待たせ」

誠が指定した品川プリンスホテルの『DINING & BAR TABLE 9 TOKYO』。そこに、真紀はひとり待っていた。

誠が現れると、彼女は嬉しそうにおなじみのエルメスの太いバングルを揺らす。

「突然、どうしたの?」

「聞きたいことがあるんだ」

真紀と会うのは、彼女がバーで泣いて去った以来、実に4ヶ月ぶりだ。

正直、誘いに応じてくれるとは思わなかった。…しかも、当日に。以前、会ったときの気まずさは一切感じられなかった。

「え!?仲直りの協力をお願いされると思ってきたのに」

どうやら圭一は誠とのトラブルをすべて真紀に話しているらしい。彼女は自分が問題の発端だと理解しているものの、本当のことを言えず、心苦しかったと言う。

「圭一も、あのときは言い過ぎたって反省していたわ…。あ、会うことは言ってないから安心して」

真紀は不安げに笑った。その笑顔に心が揺らいだものの、誠は気持ちをひきしめる。

― 笑顔なんかに、騙されちゃいけない…。この嘘だらけの女に。

ここに真紀を呼び出した理由が、呼び戻される。問い詰め、疑惑を暴いてどうにかなるわけではないが、圭一に改めて忠告し、信じてもらうための材料にはなる。

自分は恩人である彼に幸せになって欲しいだけなのだ。

誠は熱が冷めぬうちに、はっきりと告げることにした。

「真紀さん。君はパリ帰りなんかじゃないよね。愛知生まれで咲良と同級生だったんだろう?」

追求すると、途端に真紀の顔は真っ青になった。

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