29歳のヒエラルキー Vol.10

29歳でも、「かわいい」だけであの子に勝てると思ってた。「29歳のヒエラルキー」全話総集編

29歳。

それは、女にとっての変革の時。

「かわいい」だけで頂点に君臨できた女のヒエラルキーに、革命が起きる時──

恋愛市場で思うがままに勝利してきた梨香子は、29歳の今、それを痛感することになる。

ずっと見下していた女に、まさか追いつかれる日が来るなんて。

追い越される日が来るなんて。

「29歳のヒエラルキー」一挙に全話おさらい!

第1話:「私が引き立て役なの…?」可愛いだけの女が、男たちの前で恥をかかされた夜

慶應大学の文学部出身で、大手総合商社で働いている。一般職だけど、責任感を持ってきっちり仕事をしている。飲み会の場数も踏んで、培ってきたコミュニケーション能力には自信がある。

それに、なにより。ほら、私はかわいい。

田舎で一番と言われるレベルじゃない、ちゃんと東京でも認められるレベルに。

それなのに…。私があんな女に負けるだなんて、絶対におかしい…。この私が…。

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第2話:地味な女友達を、脇役のつもりで食事会に呼んだら…。「この子、いつもと違う」と女が焦った理由

目の前には、ギラっとした大手広告代理店の男が3人。

私の隣には、それと相反するような、地味な女が1人。

黒いスーツに暗めの髪色。ほぼスッピンに近いような薄化粧。

絢はこの男性陣には釣り合わない。私は確信を持って、そう思っていた。

―それなのに、なぜなのだろう。

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第3話:化粧室で聞こえてきた、後輩たちが話す声。自分の噂話を耳にしてしまった女は、思わず…

「今日楽しみだな~、イケメンいるかな」
「全員イケメンらしいよ」

これから食事会なのだろう。彼女たちは入社4年目、26歳。数多くいる後輩の中でも可愛いがっている子たちで、私のこともよく慕ってくれている。

むしゃくしゃした気持ちを紛らわせたい。そう思って、彼女たちの雑談に混ぜてもらおうかと個室から出ようとした瞬間―。

体が、まるで凍りついたかのように動けなくなった。

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第4話:「ああいう子は、美人なのに結婚できない」男が途絶えない美女がそう評価される、残酷すぎる理由

― …てか、本当?私が6階のワンルームを借りるのに、親に援助してもらっているというのに…。絢は最上階の1LDKに住んでいるって、本当?

ふと浮んだ疑惑の念は、私の足をエレベーターホールにまで引き戻した。

エレベーターはすでに閉まり、上へと上昇していっている。エレベーター横についている小さな階数表示灯には、7、8、9とカウントアップしていく数字が光る。

私は何かを祈るような気持ちで、その数字をじっと見つめた。

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第5話:「好きな人がかぶってるからって、こんな牽制あり?」第一印象でビビッと来た男性を女友達も狙っていて…

冷蔵庫に常備しているボルヴィックを一気に流し込む。とにかく、無理やりにでも自分をクールダウンさせたかった。

けれど、冷たい水を飲み干しても、絢の言葉がフラッシュバックする。苛立ちは、自分自身へと向かった。どう考えたって、絢のほうが圧倒的に正論だって言うことくらい、わかっていたから。

水のボトルを置こうとしたその時、テーブルの上のスマホがブブっと震え、絢からの新着メッセージを知らせる。

ほんの数分前に口論したばかり。また何か追加で文句を言われるのかと思い、恐る恐るスマホを覗くと…。そこには、意外な言葉が並んでいたのだ。

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第6話:彼氏がいても、”もっと上”を探してる。罪悪感ナシだった女がタクシーから目撃した、信じられない光景

「梨香子も豪さんがタイプ?」

絢は真正面から、本題に切り込んだ。何かを取り繕う様子も、隠そうとする仕草もない。

「うん」

だから、こちらも素直になれた。絢と喧嘩するのかな。気まずくなるのかな。そもそも、豪さんの連絡先を教えてくれなかったらどうしよう。私に恋人がいると吹き込むかもしれない…。

でも、そんなことをぐるぐると考えていたことがバカらしく思えるほど、絢はカラっとしていた。

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第7話:彼とお泊まりしたかったのに、2軒目もナシで帰らされた女。解散の直後に彼から届いたLINEとは

朝目覚め、目当ての男からの新着LINEを見ると、それだけで良い1日になる気がする。女は単純だと、我ながら思う。

飲み会が終わってすぐ、私は豪さんに連絡をした。それから1週間、他愛もない会話がなんとなく続いた。

けれど、一向に食事に誘われる気配がない。どんな仕事をしているかとか、好きな映画は何かとか、そんな話ばかり。

しびれを切らした私は、つい自分から食事に誘ってしまったのだが、案外あっさりOKをもらえた。ついに明日、2人で食事に行く。

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第8話:「まさかあの2人、付き合い始めた?」焦りのあまり恋敵の自宅に突撃し…29歳女がとった奇行

― …絢と豪さん。…うそだよね?

一度脳内で紡がれたストーリーが、どんどん嫌なほうに加速してしまうのは何故だろう。そして、どうやっても頭にこびりついて離れない。

正々堂々勝負しようと絢と誓ったけれど、やっぱり豪さんと絢が結ばれるなんて、耐えられない。

他人の恋愛がうまくいかないように願うなんて最低だってわかっている。だけど、そんな正論はこのときの私には何の意味もなさなかった。そして、私は…絢を問いただすことにした。

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第9話:「3週間なかっただけで…?」彼氏からの誘いを断りつづけた女が、朝からうけたまさかの仕打ち

「…隠すようなことじゃないから、ハッキリ言うね。私、豪さんと付き合い始めた」

絢が気まずそうに、それでも淡々と語ったその事実だけじゃない。もちろん、それはそれで私の自尊心をめちゃくちゃに傷つけ、最高に苛立たせた。

でも今、私の心は…

左手の中で煌々と光るスマホにつづられた、絢からの長文メッセージに支配されていた。

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