29歳。
それは、女にとっての変革の時。
「かわいい」だけで頂点に君臨できた女のヒエラルキーに、革命が起きる時──
恋愛市場で思うがままに勝利してきた梨香子は、29歳の今、それを痛感することになる。
ずっと見下していた女に、まさか追いつかれる日が来るなんて。
追い越される日が来るなんて。
鏡の中の自分を見つめると、まるで白雪姫にでてくる女王のような気分になってくる。
ぱっちり二重に、通った鼻筋。スッピンでも勝負できると自負する顔立ちに、丁寧に施したメイク。
― 私、本当にきれい…。
そして、自分でも怖くなるほどに、心の奥に眠る野心みたいなものがうごめくのを感じる。
― もっと、もっといい男をものにしたい。
別に、芸能人とかスポーツ選手とか、そんな殿方を狙っているわけじゃない。あくまで一般人が出会える現実的なラインの、最高峰。
ルックスの良い、エリートなサラリーマン。できれば育ちが良くて、身長が高いほうが良い。
高望み?
いやいや、私だって、そんな男性に釣り合うくらいにはイイ女だと思う。
慶應大学の文学部出身で、大手総合商社で働いている。一般職だけど、責任感を持ってきっちり仕事をしている。飲み会の場数も踏んで、培ってきたコミュニケーション能力には自信がある。
それに、なにより。ほら、私はかわいい。
田舎で一番と言われるレベルじゃない、ちゃんと東京でも認められるレベルに。
それなのに…。私があんな女に負けるだなんて、絶対におかしい…。
この私が…。
この記事へのコメント
慶應
総合商社
絢さん、なかなか言いますねえ。
自分では世界で一番美しいとお思いのようだけど。
で、あまりにも女王様と言うか、他の人を見下し過ぎてる感も。そりゃキャバ嬢顔負けって位ド派手な人より、絢みたいにシックな服装で丁寧な言葉遣いの女性の方が選ばれるよね。