あのコはやめて Vol.2

「2人きりで会えないかな」親友の婚約者から突然のLINE。気になる逢瀬の理由とは

「そんなわけないよな…」

誠はふっと思い浮かんだ自分本位の妄想に、ツッコミを入れるようにつぶやく。その挙動不審さは、圭一と咲良の盛り上がっていた会話を止めるほどだった。

「あ、ごめん。何でもない」

慌てて取り繕うも、ほろ酔いのふたりは素直に受け入れる。ホッとするが、気持ちは変わらず重いままだ。

その後、真紀は席に戻って来たものの、すぐ「仕事に呼ばれたの」と、帰ってしまう。

急な演奏依頼と言ってはいたが、やけに言い訳じみていると誠は疑念を抱いたのだった。


数時間後。圭一と咲良の2人は、相当飲みすぎてしまったようだ。

酔っぱらってリビングのソファーで眠りに落ちる圭一。咲良もどこかうつらうつらとしている。

やれやれと思った誠は、咲良に帰りを促そうと立ち上がる。すると突然、スマホに一件の通知が届いた。

『もう、終わった?』

真紀からのLINEだ。『いま帰る』とだけ返信すると、すぐ返事がきた。

『今度、2人きりで会えないかな。誠くんと』

『あ、圭一には内緒で』

誠はメッセージの内容が見えないように、スマホの画面を咄嗟に伏せる。そして、そのままポケットに忍ばせた。

今まで真紀から個別に連絡が来ることなど、圭一が絡む事務連絡しかなかった。しかも、2人で会うなんて初めてなのだ。

咲良を見てから急変した、真紀の態度。

咲良に何か問題でもあるのだろうか。それとも、真紀は彼女の“何か”を見抜いている…?

「ただいま」

その時、圭一の8つ歳下の妹・沙耶佳が、博物館学芸員の仕事を終え帰宅してきた。

「ごめんね。お兄さん、こんな感じなんだ」

「すみません!すぐ兄の部屋まで、連れて行きます」

沙耶佳は圭一をよろめきながら担ぎだす。誠も肩を貸し、部屋まで運ぶことになった。

「…仕方ないですよね。今日は兄もすごく楽しみにしていたので」

そう苦笑いをする沙耶佳。聞けば、圭一は誠から「恋人ができた」と報告された日に、帰るなり家族中に報告していたのだという。

誠の幸せを自分のことのように喜ぶ親友に対して、胸が熱くなった。だが、その一方で理不尽な忠告で横槍を入れる、親友の恋人…。

やはり、どうも理解できない。

「沙耶佳ちゃん。最近、真紀さんに会った?」

誠は何かヒントを探ろうと、沙耶佳に尋ねた。

「はい。昨晩は真紀さんも一緒に家族で食事しましたよ」

昨晩の彼女の様子を伺うが「別にいつも通りでした」と、あっけらかんとした回答のみ。結局、何もわからなかった。

誠は頭を抱えつつ、眠る咲良を家に送るためタクシーへ運ぶ。そして、彼女に背を向け真紀に『わかった』と返信した。

― とりあえず、会ってみようか。

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