
~ゼロからつくる喜びを感じながら、知られざる途上国の底力を伝えたい~
令和のニューリーダーたちへ
発展途上国の職人たちと濃密なコミュニケーションを行うことで、現地の素材を使用した高品質な商品を世に送り出しているマザーハウス。
創業者である山口絵理子氏は自身でバッグやアパレルのデザインも手掛けているが、もともとは起業家もデザイナーも目指してはいなかった。
小学校時代にいじめに遭い、教育を変えたいと思っていた山口氏がなぜ途上国でブランドを立ち上げることになったのか。
誰かに敷かれたレールではなく、道なき道を進むことが「楽しい」と話す山口氏。
これまでの歩みを振り返ることで、日本に欠けていて途上国にはあるものを紐解くとともに、次代を切り拓くニューリーダーとしての心構えを探る。
金丸:本日は株式会社マザーハウスの山口絵理子さんをお招きしました。お忙しいなか、ありがとうございます。
山口:こちらこそ、お招きいただき光栄です。
金丸:お話を伺う舞台は『南青山 七鳥目』です。その名のとおり、港区南青山7丁目にある焼き鳥のお店。オープンして5年目ですが、初年度から予約困難になるほど人気で、安全な飼料で長期飼育された「松風地鶏」をはじめ、各地の地鶏を最高級の炭でいただけるそうです。
山口:すごく楽しみです。
金丸:まず、マザーハウスについて簡単に教えてください。
山口:マザーハウスは「途上国から世界に通用するブランドをつくる」という理念を掲げ、2006年にバングラデシュで起業しました。
金丸:では、素材もバングラデシュのものを?
山口:はい。その土地の特産物を掘り起こして商品にするのが、私は好きなんです。バングラデシュはジュートという麻や牛革が有名なので、それを使ってバッグを作ったのが始まりです。現在はインドで洋服、ネパールでストール、スリランカ、インドネシア、ミャンマーではジュエリーと、各地の特色を生かした商品づくりをしています。
金丸:どこでも手に入るのではないという希少性が、ブランドの力になっているわけですね。最近では食品も扱っているとか。
山口:今年からインドネシアのカカオを使ったチョコレートの販売を始めました。
金丸:どのような形態で販売されているのですか?
山口:直営店が国内に34店舗あり、海外は台湾、香港、シンガポール、パリに出店しています。あとはオンラインショップですね。
金丸:ちなみに商品の価格帯は?
山口:バッグだと平均単価が3万2,000円くらいです。
金丸:当然ながら「安さ」をウリにはしていない。途上国の労働力を安く使っているに過ぎないですからね。
山口:もちろんです。工場は自前ですし、労働管理も自社で行っています。今、バングラデシュの工場には250名の工員がいます。お客様には「国際貢献のため」という理由ではなく、商品の良さで買っていただきたい。だから品質には妥協しません。職人にレベルの高いことを要求しているぶん、給与も労働環境も現地ではトップクラスです。
金丸:バングラデシュは日本よりも人口が多いですよね。
山口:今、1億6,000万人くらいです。
金丸:日本よりも人口が多く、エネルギッシュな国。そこで活躍されている山口さんですから、今日はエネルギーにあふれたお話を伺えるはずです。どうぞよろしくお願いします。