29歳のヒエラルキー Vol.2

地味な女友達を、脇役のつもりで食事会に呼んだら…。「この子、いつもと違う」と女が焦った理由

―なんで、私がこんな思いしなくちゃいけないのよ。

食事会から帰るタクシーの中で、今日の屈辱にも似た感情を思い起こしていると、手の中のスマホが震える。久々に絢からLINEが届いたのだ。

<Aya:梨香子、今日楽しかったね!それにしても、本当偶然だったね!>

絢からのメッセージを見つめながら、思った。…そうだ。絢に教えてあげなくちゃ。

<梨香子:私も久々に会えて嬉しかった~!ねぇ、今度商社マンと飲み会しようって言っているんだけど、良かったら絢も来ない?>

なるべく感じのいい文面になるように気をつけながら、私は絢にLINEを返す。でも、心の中ではたった一つのことを呪文のように繰り返していた。

―絢に教えてあげなくちゃ。思い出させてあげなくちゃ。…モテるのは私で、絢は引き立て役だってことを。

あれは、高校時代だったかな。絢は陸上部の先輩にずっと片思いしていた。2年間の片思いの末、卒業式に思い切って告白していたけど、あっけなく振られていたっけ。

でも、そんなのわかりきったことだった。だって、カッコ良くて運動神経抜群の先輩と、地味で目立たない絢。全然釣り合っていないもの。

ちなみに、その先輩は絢のことを振ったあと、私に告白してきた。まあ、タイプじゃなかったから付き合わなかったけど。

昔からそう。絢と私は、生きるレイヤーが違うのだ。だから、ちゃんとそれをわかって欲しい。

<Aya:商社マン?えー、行きたい!梨香子すごいね、人脈あるんだね!!>

浮かれ切った様子の絢からのLINEを見て、思わず笑みが溢れる。

―ほら、食いついた。もしかしたら絢って、こういう飲み会すらあんまり経験ないのかも…。…楽しみ。

そう、今日はちょっと運が悪かっただけ。たまにはそんな日もある。

絢との食事会、次こそは絶対に私が主役になれる。そう思うと、さきほどまでの重苦しい気持ちが一気に晴れていった。

「あ、すみません。ここで降ろしてください」

気分があがると、音楽を聴きながら歩きたい気分になる。人間って単純だ。

恵比寿3丁目の交差点でタクシーを降り、広尾の自宅まで歩いた。


昔からの古い建物や商店が残りながらも、とんでもなく豪華なお屋敷や綺麗なマンションも立ち並ぶこの街を、私はとても気に入っている。

喧騒からは離れているけどアクセスは良く、何より「広尾住み」という響きが良い。

広尾に住むだけならば、一般職の私の給料でもギリギリ払えないことはな......


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