ヤドカリ女子 Vol.3

「家に帰りたくなくて、男の家を転々と…」真実を打ち明けた女が見た、後輩男子の意外な反応

そうだ、彼はこういうところがある子だった。恥ずかしさに顔が熱くなる。よく言えばおおらか、悪く言えば無神経。人が気にしていそうなこと、割とずばずば言っちゃうのよね。

やっぱりご飯まで出されるなんて施しを受けるみたいなこと、プライドが許さない。さっさと帰ろう。

あんなが顔を上げると同時に「お待たせしました」と祥吾がトレーをテーブルに置いた。

出されたのは、ふっくらとした梅干しと、煎りごまのかかった出汁茶漬け。

「…これ、今作ったの?」

千切りにされた大葉が、器の中で彩りを添えている。おぼろ豆腐が小さく盛られた小鉢も出され、なんだか急にお腹が減ってくるのを感じた。

「作ったっていうほどのものでもないですよ」

少し照れたように笑いながら、祥吾は「いただきます」と手を合わせるあんなの隣に座った。

あんなは握ったれんげで、お茶漬けを口に運ぶ。疲れ切っていた五臓六腑に、優しい味が染みわたっていく。

「すごいよ、こんなにちゃんとしたものをパパっと出せるのは。私なんて…」

自虐しかけて、慌てて口をつぐんだ。自ら男に弱さを見せようとするなんて、今日の私はどうかしている。

ちらりと横を見ると、彼との距離は思ったよりも近かった。2人掛けのソファだから当然だが、後輩男子と座る距離感ではない。

改めて祥吾の容姿を確認すると、あんなが関係を持つ男とは真逆の風貌だった。あんなは、背が高くて体を鍛え、髪を整えた『男らしい男』をコントロールすることに意味を見出していたから。


しかし、祥吾は…。長い前髪は天然パーマでうねり、四肢はひょろひょろと痩せている。身長はあっても、猫背なので小さく見えてしまう。つまり『オス』を全く感じないのだ。

「私なんて?」

ぱくぱくと夜食を食べながら、祥吾は何の気もなさそうに続きを促す。あんなは小さく息を吐き、れんげ......


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