SPECIAL TALK Vol.77

~自分の目で現地の状況を見て、伝える。興味の赴くまま、自分にできることを見つけてきた~

厳しい現実を目の当たりし、自分にできることを探す

金丸:ミス・ユニバースから、現在のWFPの活動にどのようにつながっていくのか、聞かせていただけますか?

知花:私はもともと教育に関心があって、大学でも国際教育学を学んでいました。世界中の子どもたちが分け隔てなく学校に行けるようになるにはどうしたらいいかをテーマに研究もしていましたが、恥ずかしながらWFPのことは知りませんでした。ただ、ミス・ユニバースのあと、いろいろな方にお会いするなかで、WFPの活動についてお話を聞く機会がありまして。

金丸:どのようなお話だったんですか?

知花:WFPは学校で給食を配るという活動を行っています。給食があると、子どもたちの出席率がグンとが上がるんですね。

金丸:それはそうでしょうね。貧しい国や地域では、子どもたちは家庭にとって労働力なわけですから、学校に行かないというのはある意味、当然だと思います。貴重な労働力を学校に送り出して、しかも給食費まで負担するとなれば、なかなかハードルが高い。

知花:そんな子どもたちが、給食をきっかけに勉強のチャンスを得られる素晴らしいプログラムだなと思い、私も何か力になりたくて、「ぜひ活動に参加させてほしい」とお願いしました。それが今につながっています。

金丸:WFPの活動で初めて訪ねた国はどこですか?

知花:アフリカのザンビアです。自分がこれまで無意識に持っていたモノサシでは測れない世界が広がっていました。日本とはあまりにも違っていたので、これはいいのか悪いのか、豊かなのか貧しいのか、いったい現地の人たちにとって何が幸せなのかなどがまったくわからなくなり、混乱しました。そして目の前で苦しんでいる人がいても、自分には何もできないという状況は、正直ショックでした。

金丸:随分前の話になりますが、私は一度、マザー・テレサの家に行ったことがあります。そこで出会った子どもたちは、貧しいけれど、みんな人懐っこくて。この子たちに何かしてやれたらと思うんだけど、たとえばお金を配るとしてもたいした額しかできないし、一瞬暮らしが楽になったとしても、根本的な解決にはならない。帰国するときには、軽い気持ちで訪ねたことを後悔していました。そんなふうに、現地を訪れて、自分の無力さに打ちのめされる人は多いような気がします。

知花:そうですね。私だって、できることはそんなに多くはありません。自分にできることは何かといえば、「この現実を伝えること」に尽きます。だからそのためにちょっとずつ、自分にできることを一生懸命やる、ということを心がけています。

金丸:そうやって長年続けられているのは、偉大だと思いますよ。

知花:そんなことはないです。

金丸:ちなみに、今まで一番印象に残っている国はどこですか?

知花:これもよくいただく質問なんですが、やはり国によって抱えている問題が違うので、一概には選べないですね。現状を自分の目で見てみないと、人には伝えられないので、なおさら現地に行きたいと強く感じています。コロナ禍で難しいですけど、できる限り早く再開できることを祈っていますし、発信していきたいです。

金丸:情報発信は、どのようなかたちでされているのですか?

知花:マスメディアに取り上げてもらうこともあれば、トークショーでお話ししたり、媒体に記事やエッセイを書いたり。私は短歌もやっているので、歌にすることもあります。

金丸:短歌で情報発信というのは独特ですね。それこそ、知花さんにしかできない情報発信のあり方だと思います。これまで発信を続けてこられて、まわりの反応はいかがでしょう?

知花:それが正直に言うと、最初のうちは、厳しい声や非難の声ばかりいただきました。

金丸:えっ、非難ですか?

知花:「偽善的だ」とか、「現地で活動してこそ本物だ」というような……。

金丸:それはひどい話ですね。現地の状況を日本に伝えるというのは、それはそれで意味があるし、誰にでもできることではないのに。

知花:自分の活動が中途半端だから、こんなふうに言われるんじゃないかと悩んだ時期もありました。でも東日本大震災を機に、自分のこととして考えてくださる方が増えたような気がします。それにつれて、反応も好意的なものに変わっていったように感じています。

金丸:企業経営者のなかには、ボランティアや社会貢献に関心がある人もいます。そういう方へのアプローチはされているのですか?

知花:経営者の友達や知り合いもいますし、個人的にお世話になっている方もいらっしゃるのですが、活動のサポートとなると、なかなか難しいですね。よく言われるのが、「あなた個人の活動に対してはお金を出したいけど、国連に寄付をするのはちょっと違うんだよね」と。

金丸:なるほど。国連に対して懐疑的な人もいらっしゃいますからね。

知花:子どもたちに対する支援にもいろいろなかたちがあるので、どういった面をサポートしたいのかがはっきりしていれば、やりようはいくらでもあります。たとえば学校建設や奨学金の支援、里親制度など選択肢はたくさんありますから。

金丸:世界各地を訪問するなかでは、ショックなことやつらいこともあったと思いますが、楽しいことや感動することもありましたか?

知花:もちろんです。こうしてステーキをいただいていますが、アフリカのマサイ族の村で食べた牛は、今でも忘れられません。牛を絞めるところから見せてもらいました。かわいそうな気持ちもあるのですが、マサイの戦士たちは誇りをもって狩りをし、美しい手業で絞めていきます。血の一滴も無駄にしないよう、その場で血をコップですくい、おいしそうに飲み干して。

金丸:それは決して、残酷な光景ではないですよね。

知花:ちなみにそのとき、「すごくいいものを買ってきたよ」と、コーラまでいただきました(笑)。

金丸:資本主義の象徴であるコーラが(笑)。なんとも言えない組み合わせですね。

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