私たち、出逢わなければよかった Vol.2

婚約者の前なのに…。別の男に心奪われた女がやってしまった、最低な行動

一瞬の微笑み


「初めまして。今回、御社のプロジェクトをお手伝いさせていただく麻生と申します。どうぞよろしくお願いします」

ミーティング冒頭、彼は爽やかな声で挨拶した。会議室の端で、菜々子はそんな麻生のことをチラチラと盗み見る。

名前や顔、声のすべてが、記憶の中の彼と同じだ。

部屋には、麻生と部長と菜々子の3人。他のメンバーはオンラインで参加している。

プロジェクトメンバーの全員が挨拶を終え、いよいよ本題というところで、部長が振り返って菜々子にも自己紹介するよう勧めた。

「岸田さんも、ほら」

まさか自分にスポットライトがあたると思っていなかったから、慌てて立ち上がる。

「本プロジェクトの事務を担当します、岸田菜々子です。よろしくお願いします」

深々と頭を下げて、顔を上げたその時。こちらを向いていた麻生と目が合った。ほんの一瞬だが、彼の口元が緩み、優しい目をしたように見えたのだ。

すぐにスクリーンの方を向いてしまったが、菜々子はその一瞬にドキッとした。

―私のことを認識してるの…?

すっかり忘れられたものと思っていたが、もしかして。そんな淡い期待がよぎる。


「今日は、ありがとうございました」

会議を終えた麻生はパソコンをカバンに詰め込み、帰る支度を始めた。

「次回ですが…」

そう彼が話し始めたところで、部長のスマホが激しく鳴った。その音に、先ほどまで穏やかだった部長の顔つきが変わる。

これは、何かあるとすぐに部下......


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