2021.01.18
柳 忠之のこの12本におまかせ Vol.2新しい年を迎えた今。
今年も沢山の美味しいワインと出会えることを、期待しているワインラバーは多いだろう。
そんな貴方のために、今年最初にご紹介するのは「キャンティ・クラッシコ」。
ワイン通にとっては常識だが、一般の人にはあまり知られていない小ネタとともにお届けしよう。
本来のキャンティとは、軽井沢でいう旧軽井沢
――あら、柳さん、今頃『鬼滅の刃』ですか?
柳「ああ、クラリン(担当編集の嵩倉)。映画を観たらその前後が気になっちゃって。今、コミックを1巻目から読んでいるとこ。結末を知ってても絶対言わないでよ。」
――今更ながら面白いですよね。
柳「今更ながら……と言えば、先日、大いに見直したワインがあるんだ。クラリンはキャンティ・クラッシコって知ってる?」
――キャンティならもちろん知ってますよ。近所のパスタハウスにも置いてあるし。イタリアで一番有名なワインじゃないですか。
柳「やっぱりわかってない。」
――えっ、わかってない?
柳「うん、キャンティとキャンティ・クラッシコは似て非なるもの。
本来キャンティは、イタリア中部・トスカーナのフィレンツェからシエナにかけての丘陵地帯で造られていて、イタリアで最もポピュラーな品種のサンジョヴェーゼ種から優れた赤ワインが生み出されていたんだ。
ところがその名声にあやかって周辺のワインまでキャンティを名乗り出し、キャンティのエリアが膨張。
それで原産地呼称制度が生まれた際、昔ながらの由緒正しきキャンティは、キャンティ・クラッシコと名乗ることに決めたんだ。
周辺のキャンティには、キャンティ・ルフィーナやキャンティ・コッリ・フィオレンティーニ等、特定の地域名を名乗るものもあるよ。」
――まるで軽井沢ですね。キャンティ・クラッシコはいわば旧軽?
柳「うん、そんなところ。なにしろ1716年にトスカーナ大公コジモ3世がキャンティと定めたエリアこそ、今のキャンティ・クラッシコだからね。ところが……。」
最上級カテゴリーが、イメージアップの切札
――ところが?
柳「クラリンのようにキャンティとキャンティ・クラッシコの区別がつかない人って世間一般に多い。
協会はキャンティ・クラッシコの目印として、キャンティのシンボルである黒い雄鶏のマークを貼ることにしたけど、それに気付くのもワイン通に限られるし。」
――あっ、これですね?う〜ん、微妙。
柳「今ではほとんど見かけなくなったけど、僕ら世代だとこもかぶりの瓶に入った安ワインのイメージもまだ抜け切っていない。
それで有力生産者がイメージアップの切札に出してきたのが「グラン・セレツィオーネ」だ。」
――グラン……なんですって?
柳「グラン・セレツィオーネ。2014年に新たにできたキャンティ・クラッシコの最上級カテゴリーで、最も厳しい規定が設けられ、ブドウはワイナリー自園のものに限られる。
今月の1本に選んだ「チェーニプリモ」はべらぼうに素晴らしい。パワフルさとエレガンスがせめぎ合ってる感じ。ここぞというときに、全集中して、じっくりと味わうべきワインだね。」
イタリアワインを代表する「キャンティ」の最高峰!
「Ceniprimo Chianti Classico DOCG Gran Selezione(チェーニプリモ・キアンティ・クラッシコ・グラン・セレツィオーネ)」
キャンティ・クラッシコの名門ワイナリー、バローネ・リカーゾリの単一畑から生まれた最高峰格付けグラン・セレツィオーネ。
9,800円/株式会社フードライナー TEL:078-858-2043
編集部員・嵩倉が飲んでみた!
透明感すらある薄い赤色に、安酒の味を想像していたら飲んでびっくり!
ほどよくタンニンが効いていて、飲めば飲むほど美味しい。ふと、先日出会った、渋めで大人な彼と重なりました。
◆
教えてくれたのは
ワインジャーナリスト 柳 忠之氏
世界中のワイン産地を東奔西走する、フリーのワインジャーナリスト。迷えるビギナーの質問に、親身になって答えるワインの達人。
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