2021.01.17
夫の寵愛 Vol.1毅は「美人だ」と言ってくれるが、33年間生きてきて自分が美人だと思ったことは、あまりない。
むしろ、いたって普通だ。
共働きの両親のもと長女として生まれ、杉並区のごくごく普通のマンションで育ち、成長が止まったときには平均身長、平均体重。恋愛経験も学歴も平均的で、特筆すべきものはない。
もちろん“普通”が難しい時代だからこそ、それだけで十分に恵まれているとも思う。
ただ何より恵まれているのは、毅と出会えたこと。
彼とは4年前、仕事を通じて知り合い、その1年後には入籍したから、結婚してまもなく丸3年が経つ。
夫は、未だに自分のことを全肯定してくれる。
―彼は私のことが好きだから、褒めてくれるだけなんだ。
勘違いしないように自分にそう言い聞かせるが、それでも毅が褒めてくれるたびに里紗は「私って特別なのかもしれない」と思ってしまう。
結婚後、一度は専業主婦になったものの、子供のころに抱いていた「料理教室を開きたい」という夢を実現することができたのも、彼が背中を押してくれたお陰だ。
毅は精神的に支えてくれただけではない。金銭的にもすべてサポートしてくれた。空間プロデューサーという仕事を活かし、素敵な内装のキッチンスタジオが、池尻大橋の自宅近くに完成した。
―こんなに完璧な人はいない。こんなに私を愛してくれる人はいない。
常々、里紗はそう感じていた。それどころか「どうして私なんだろう?」「毅さんは私みたいな人でいいのだろうか?」とすら思ってしまう。
一度だけ、酔った勢いで「もっと他に素敵な女性が現れたら、乗り換えてもいいんだよ?」と口走ったことがある。
毅は真剣に怒って「里紗は世界でひとりしかいない。俺は里紗がいいんだ」と言ってくれた。
その時は、嬉しくて泣いてしまった。
世間では、毅のような夫を“愛妻家”と呼ぶのだろう。
しかし、彼はそう言われることに不満を感じるらしい。
「愛妻家って言葉があっても、その逆の、愛夫家って言葉はないでしょ?」
「うん、たしかに、聞いたことないね」
「それってつまりさ、妻が夫を愛してるのは当たり前、でも夫が妻を愛してるのは珍しい、ってことだと思うんだ。珍しいからわざわざ“愛妻家”なんて言葉を作ってレッテルを張るんだよ」
いつもの大真面目な顔で彼は言う。
「夫が妻を愛して何が悪いんだよ」
毅がいるかぎり、里紗の人生に、新たな男は不要だ。
だから、知らない男から誘いのDMが送られても、心が動くことはない。返事なんてするわけがない。
―毅に出会い、愛されて、私は真実の愛を知った。
恥ずかしい発言も大真面目に言いのける彼と違って、里紗は照れてしまうので伝えたことはない。だが紛れもない本心だ。
『毅に愛されている』そう思うだけで、どんな困難にも立ち向かえる気がした。
だから、例の見知らぬ男から『お願いですから無視しないでください。もう一度会ってください』という2通目のDMが届いても気にならなかった。
…3通目のDMが届くまでは…。
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