貴女みたいに Vol.4

「たった一回の過ちで…?」恋も仕事も順調なはずの女に下された、ありえない決定

身体が鎖で縛られたように重く、動かない。額や背中にジワリとかいた汗を感じる。その一方で寒気も止まらなかった。

「…智樹…」

懸命に声を出し、手を差し伸べる。

―行かないで。待って…。

声にならない声を、絞り出そうとしたときだった。

「夏絵さん?」

―え?

夏絵はハッとして、飛び起きた。心臓がバクバクと脈打ち、喉がカラカラだ。

―…夢?

慌ててスマホで周りを照らすと、そこは見慣れた自分の部屋、自分のベッドだ。ほっと胸を撫でおろした束の間、視界の隅に映った白い顔に驚愕の声を上げる。

「きゃ!!」

「夏絵さん、大丈夫ですか?うなされてたみたいですけど。お水飲みます?」

夏絵の部屋着を着た恵理が、心配そうに恵理の顔を覗き込んだ。

―そっか。恵理ちゃん、泊まりにきてたんだ…。あの後、荒れて酔いつぶれちゃって、家まで智樹とタクシーで運んだんだ。

昨日は不思議な1日だった。入社早々恵理についての怪文書が出回り、それの弁明に奔走した。智樹とのデートになぜか恵理も同席し、彼氏を名乗る強面の男が現れたのだ。

きわめつけは…

「夏絵さん。ごめんなさい。智樹さんのこと恋人だなんて言って」

「ああ。うん…。しょうがないよ。そうでも言わないと、諦めないでしょ。元カレ」

スマホの時計を見ると、午前4時前だ。頭痛も酷いが、眠り直すにも起きるにも中途半端な時間で、思考もうまく回らない。

「これからも、しばらく智樹さんに彼氏のふりしてもらっていいですか?」

もう、この状況でどう返事をすれば良いのかもわからない。夏絵は「もう一眠りするね」と告げ、布団を頭からかぶった。


翌朝目がさめると、恵理の姿はなかった。

「…あれ?恵理ちゃん。先に出たのかな」

いったん自宅に帰って、着替えて会社に向かったのかもと思いながらスマホを手に取ると、電源が落ちている。

慌てて電源を入れて画面を見た恵理は、愕然とした。

「10時40分!?」

......


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