イケメン中毒 Vol.1

イケメン中毒:私が男に求めるのは顔だけ。超絶イケメンに溺れる年収2,000万の女を襲った悲劇

顔以外、知らない


クロワッサンを購入した菜摘は、タクシーに乗り込んだ。自宅のある青山一丁目までは歩いても帰れる距離だが、一刻も早く涼介に会いたい。

信号が変わるのを待っている間、ふと窓の外に目をやると、ビルの広告に今を時めく俳優が大きく掲載されていた。

巷では演技が下手などと叩かれているし、実際ドラマを見ているとそう思う部分もあるのだが、正直イケメンなら何でも良い。見ているだけで癒してくれるのだから。

お金なんて自分で稼げば良いから求めない。ただ、イケメンが良いのだ。

この極端な恋愛観のせいで、これまでも散々な目に遭っているが、それでもイケメン好きはやめられない。

-でも…。今私が一番大事なのは、涼介だけ。

付き合って3か月になる恋人・涼介は、現在は、IT企業の広告営業をしている、28歳。

友人主催のホームパーティーで知り合って一目ぼれした。猛アタックの末付き合うことになり、この3か月の間あれこれプレゼントしてしまったが、後悔などしていない。

ダンヒルのスーツに、マッキントッシュのコート。何を身に着けても、にくいほどキラキラと輝いてくれるのだから。

タクシーから降りると、菜摘は彼の待つ部屋へと急いだ。


「ただいま…!?」

部屋の扉を開けた瞬間、何だかよく分からないが、嫌な胸騒ぎがした。

廊下を抜けて部屋を見ると、いつもあるはずのものがない。机の上の涼介のパソコン、ベッド脇の文庫本、クローゼットにかかった服。

代わりに、大きなRIMOWAのスーツケースを持った涼介が部屋の中央に立っている。

「ちょっと何してるの…」

そういえばあのRIMOWAのスーツケースも自分がプレゼントしたものだなと、どうでも良いことを考える。すると涼介が、不可解なことを言ってきた。

「菜摘さん。いや、花村さん。僕の苗字、分かりますか」

「えっ?」

予想外の質問に、間抜けな声が漏れる。

そんなの簡単…と答えようとするが、まさかのことが起きた。あろうことか、自分は恋人の苗字を思い出すことが出来なかったのだ。

頭が真っ白になる。だが涼介は、そんな菜摘の様子は予想していたかのようだった。表情ひとつ変えず、スーツケースをゴロゴロと引っ張りながら去っていく。

「付き合って3か月、あなたは何も質問してこなかった。

初めて会った時、僕が、“涼介です。IT企業の広告営業をしています”と言った以外、あなたは僕のことを何も知らない。知ろうともしなかった。

つまり、僕がどんな人間かなんて、全く興味がないんですよね」

妙に距離感を感じさせる丁寧な言葉に、彼の怒りを察する。謝罪しようと背中を追いかけたが、振り返った涼介は不敵な笑みを浮かべながらこう言った。

「さようなら。あ、最後に。僕の苗字は、遠藤です」

プレゼントしたマッキントッシュのコートを格好よく着こなした彼は、颯爽と部屋を出て行った。

-嘘でしょ…!?

一人取り残された菜摘は、ショックでその場に立ち尽くすことしか出来なかった。


▶他にも:「交際前の男性と、深い関係になってしまった…」本気の恋への発展は可能ですか?

▶︎Next:12月11日 金曜更新予定
ショックで立ち直れない菜摘。今度こそ男を中身で選ぼうと決意したものの…?

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この記事へのコメント

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No Name
もらったものおいてくプライドはないんかーい!!
顔はイケてても行動ダサいよ
2020/12/05 06:2199+返信6件
No Name
え?さんざん高級品買ってもらってから出て行くんだ、顎クイ君(笑)
注意されるほど露骨なのはみっともないが、お金はあるんだし美形にしか興味なくても別に困らないんじゃないかな。あまり広がらなそうなテーマだな‥‥。
2020/12/05 05:2999+返信1件
まあ
3ヶ月ホストに貢いだと思えばいいんじゃないでしょうか? 彼に満足してたんですよね。
2020/12/05 05:2373返信1件
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