本命昇格・虎の巻 Vol.3

2週間ぶりに食事した後、さっさとタクシーに乗せられて…。女が男からされた酷い仕打ち

連絡はろくに返してもらえず、相手の好きな時にだけ呼び出され、用が済んだら追い返されるー。

そんな「都合のイイ関係」に苦しむ男女たち。

好きになった方が負け。結局そのままズルズルと振り回され、泣きを見る者が大半だろう。だけどもし、そこから形勢逆転する“虎の巻”があったなら…?

坂本なつめ(28)は、幼馴染の宮本蓮が大好き。でも彼はある女性の「都合のイイ男」にされていた。

なつめは好きな男のために、一肌脱ぐことを決意する。

諦めないで。私が本命になる方法を伝授しましょう。

◆これまでのあらすじ

なつめは、好きな男である蓮と、取引先の社長・マイコの3人で食事に行くことになった。しかしマイコは食事を終えた後、蓮を自宅に招き…。

▶前回:誰にも秘密で、年上女のマンションに呼び出され…。ドアを開けるなり、男が女からされたコト


ザー…ザー…。

雨が地面を打つ音に、夢の世界がぐにゃりと歪む。

「ん…」

浅い眠りから揺り戻され、蓮は緩慢に瞼を開けた。

白くて柔らかくて、清潔なリネンに身を包まれている。ゆっくりと体を起こすと、たくさんの化粧品が並ぶ鏡台に自分の姿が映った。

見覚えのない部屋。そこでようやく、自分が置かれている状況を思い出す。

ずっと憧れていたマイコを、幼馴染のなつめに偶然紹介されたこと。なぜか食事のあと、「うちにおいで」と招かれたこと。そして、部屋に入った後のこと。

「…」

ひたり、とフローリングに踵をつける。

蓮はスリッパを履き、床に落ちているスラックスとシャツを拾い上げた。その弾みにスラックスのポケットに入れっぱなしだったスマホが床に落ちそうになり、慌てて受け止める。

画面をつけると、朝の5時半。LINEの通知は2件。暗転させ、ポケットに戻した。

ザー…ザー…。大雨かと思っていた音は、このマンションのどこかの部屋から聞こえることに気付いた。シャツの袖に腕を通しながら、石鹸の匂いに誘われるように寝室を出る。

音の漏れ出るドアの前に立った時、キュッと蛇口をひねる音と共にシャワーが止まった。蓮は、ドアノブに手を伸ばす。

扉を開けると、一気に蒸気が広がった。

「わ、びっくりした」

タオルで艶やかな黒髪をぽんぽんと拭いながら、マイコは声を上げた。

バスローブ姿に、目を奪われる。くっきりとした目鼻立ちはそのままに、化粧を落として少し素朴になった顔。

昨夜のひと時が脳裏に蘇り、蓮は思わずその細い腰に腕を伸ばした。

「甘えたさんやなぁ」

抱きつく蓮の頭を撫でて、マイコはくすくすと笑った。

「おいで、コーヒー淹れたげよ」

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