2020.10.09
黒ずきんちゃん Vol.2そこから会話は、皆の出身地の話になった。
「俺は滋賀県なんだけど、滋賀って言ったら“琵琶湖だね”としか言われなくてさ(笑)」
「圭介さん、関西なんですね。たしかに滋賀県と聞いたら、私もついそう言ってしまいそうになりました…」
「ちなみにユリアちゃんはどこ出身なんだっけ?」
「私は東京です!」
にっこり笑って答えるユリアに、拓海が嬉しそうに尋ねる。
「そうなんだ!僕も東京。どの辺りなの?」
「えーっと、東京なんだけど、ちょっと今両親が引っ越したりしていて地元が違うというか、何と言うか…」
急に歯切れが悪くなるが、私はふと首を傾げた。学生時代にカフェのバイトをしていた時、たしか実家の場所を聞いたことがあった。
「あれ?ユリアの実家って、足立区の方じゃなかったっけ?」
引っ越したのかと思い、私が何気なく話を投げた、その時。
—ゾワッ……
鋭いナイフのような視線が突き刺さるのを感じ、急な寒気に襲われる。
その視線を辿ると、今まで見たこともない恐ろしい形相で、ユリアがこちらを睨みつけていた。
「え…」
その眼差しがあまりにも強くて、私は息を呑んだ。
「ヤダ〜結衣ちゃん、何言ってるの?私はもともと港区生まれだよ?」
「え…ご、ごめんよく分かっていなくて。東京の地理、未だに苦手だな〜」
私の記憶違いだったのだろうか。なんだか余計なことを言ってしまった気がして、思わず口をつぐむ。
「ユリアちゃんも、育ちが良さそうな感じがするもんね」
「そんなことないですよ〜」
拓海とユリアの会話を聞きながら、何が正解なのか分からず、とりあえず目の前にあるワインに黙って口をつけた。
独身の良い男が圧倒的に不足している、今の東京婚活市場。
少ないパイの奪いあいに、女同士の牽制。
悪いことを言ったならば申し訳ないと思っていたが、ユリアはすぐに機嫌を直してくれたようだ。
「で、結衣ちゃんはどっちがタイプだった?」
帰り道、男性陣と別れた後に二人でお茶をしようというユリアの誘いに乗ると、いつもの彼女に戻っていた。
「分からないなぁ。二人ともいい人だったけど、私に興味があるのかどうかも不明だし…」
「結衣ちゃんは可愛いし性格もいいから、絶対にモテるよ!特に拓海さんの方が、結衣ちゃんのことを気に入っていたんじゃないかなぁ?」
「そんなことないでしょ。ユリアは?拓海さんのこといいかもって言っていたけど、どうなったの?」
「私は、今日会ったら何か違うかなぁと思った。ま、次は圭介さんの方に頼んで、また別の食事会を開催してもらおう!その時はまた呼ぶね♡」
「ユリア…ありがとう」
—さっきは何だったんだろう?多分、私の考えすぎかな。
こうしてよくある女同士の反省会を交え、和やかな雰囲気でお茶をして別れた。
しかし私は、この時抱いた違和感を、無視するべきではなかったのかもしれない。それは、私の運命が壊れ始める確かな予兆だったのだから。
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少しずつ牙を剥き始めた女の嘘
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