かまわないでちゃん Vol.2

たった29歳で成功を収めた若手女社長。彼女の影にいた、14歳年上男の正体

「ただいまー」

メイコがマンションのドアを開けると、俊也が見ているのであろうテレビの音が、微かに漏れ聞こえてきた。

「おお、おかえり」

俊也は帰宅したメイコに気付き、見ていた番組を一時停止する。

14歳年上の彼氏・俊也は、輸入家具ブランドを立ち上げ、4年で都内に4店舗、大阪に1店舗を持つまでに成長させた敏腕経営者だ。

常に忙しそうで、家でもずっと仕事をしている。

時刻は夜の9時。

彼がこの時間に家にいる時は、録画しておいたテレビを早回しで見ていることが多い。そのジャンルは報道特集番組からドラマ、バラエティーまで多岐にわたる。

「流行のドラマとかタレントのことは知っておいた方がいいよ。今は疎い人も多いけどね、意外と会話の足しになるから」

同棲したての頃、メイコは俊也からそう教わった。こんな風に彼は、メイコに色々なことを教えてくれたのだ。

知っておいた方がいい情報や押さえておいた方がいい人物。それに、経営者としての具体的なアドバイスまで。

俊也がいるから、メイコは怖がりすぎずにビジネスの道を歩いてこれた。


「夕飯、どっかで食べてきたの?」

「ううん。今日は莉子に名刺入れを買ってあげたの。あの子、来週誕生日だから」

「おお。気に入ったのが見つかったんだ?良かったな」

こんな風に俊也の目尻が下がるのを見ると、メイコはいつもホッとする。

そしてテーブルの上に並んでいる、テイクアウト用の空容器に気付いて、メイコは心の中で俊也を称賛した。

―成功してる男って、女をお手伝いさんみたいにしたがる人ばかりだけど、トシさんは違うわ。

俊也は、メイコに家事を期待することはない。掃除は業者に頼んでいるし、料理は基本的に、こうやってお互いの好きなものを好きな時に食べる。

2人は、お互いのことを干渉しすぎないようにと決めているのだ。それは5年前、付き合う時に俊也が決めたルールでもある。

変に期待をしたり、詮索したりすると、お互いに不満が募る。俊也はそれを“無駄なストレス”だと言っていた。

「恋人とか夫婦とかになると、決まってそういう無駄なストレスに囚われるんだ。そうじゃなくて、お互いいつも気持ちよく一緒にいたい」

俊也のその考えに、メイコは心から賛同した。

―相手に囚われる感情なんて私にはいらないの。仕事のために、少しでも強くいなきゃいけないんだから!

それに俊也は、ことあるごとに、メイコにこう言う。

「メイコは何も気を使わなくていいよ。僕は彼女を、家政婦みたいに扱うような男とは違うし。一緒に、それぞれの夢を追えばいい」

そんな彼と交際して、もう5年が経つ。

「俊也さん、私シャンパン開けるわ。飲む?」

「いいね」

そして俊也は、ジバンシイの紙袋を指差してニッコリ微笑んだ。

「…ああ、そうか。これがあるってことは、何かいいことあったってことだもんな」

「そうなの」

そう言って、ルンルン気分でキッチンまで歩いていくメイコ。心の中は、幸せでいっぱいだった。

仕事も充実しているし、もちろん俊也との関係に不満なんて何もなかったから。

…そう、この時までは。


▶前回:「私、男に貢がれたくないので」ハイブランドで身を固める29歳女のこだわり

▶Next:9月29日 火曜更新予定
メイコは、妹分・莉子の思わぬ本性を知ってしまう…。

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この記事へのコメント

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No Name
将来独立する前提の人を雇うってすごいな。
ノウハウ教えて給料払って、これで顧客ごっそり持って独立されたらどうするんだろう。
2020/09/22 05:3090返信9件
No Name
俊也さん、敏腕経営者だったんだ😃
野心のある若い子に色々教えるのが気持ちいいと感じる男なら、密かに莉子とも繋がっていたりしないかな? 莉子も野心家みたいだし、それくらい有り得るよね?
2020/09/22 05:3587返信3件
No Name
メイコと俊也の関係に違和感を持つのは、古い考えだからですか?

俊也にとってメイコは都合よくないですか!
(メイコも心地好いと思ってるみたいだけど)
2020/09/22 06:1031
No Name
ヴァレクストラじゃなくてジバンシィにしたんだ。
2020/09/22 06:3817
No Name
俊さん、ヒモじゃなかったんだね
2020/09/22 05:5316
もっと見る ( 35 件 )

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