彼女のウラ世界 Vol.14

「勝手にどうぞ、お幸せに」元カノの婚約報告に、男が嫉妬心を剥き出しにしたワケ

<<世界的映画監督 アンドリュー・ロペス氏 日本の実業家・近藤明子さんと婚約>>

「アンドリューと、明子が…?」

記事によると、出会いは1年ほど前だという。

現在、ニューヨークの企業で経営に携わる明子が、兄・HIROKIの紹介で彼と出会い、意気投合したことから婚約に至ったらしい。

「どうぞ、幸せに。僕にはもう関係のないことだけどね」

呆然としながら、せめてもの強がりを、自身に言い聞かせるようにつぶやく。

最後に明子と会ったのは香澄と徳田の結婚式だ。彼女に幻滅した敏郎は、その場で別れを告げて以来、会っていない上に連絡も取っていない。

―ま、僕は僕で幸せすぎるほどの生活をしているんだからね。

敏郎は今やモデル・女優として第一線で活躍している優里菜の夫として、豊洲のタワマン暮らしを謳歌している。

娘の久楽々もキッズタレントとして活動しはじめ、彼女たちを支えながら、慌ただしい日々を送っているのだ。


優里菜の本心とウラの顔


なぜ優里菜と結婚することになったのか。それは2人が週刊誌に撮られてから半年ほど経った頃のことだった。

「トシさん、その節は申し訳ありませんでした。少しお時間頂けませんでしょうか」

ずっと連絡が取れなかった優里菜の方から、突然メッセージが送られてきたのだ。

―まさか、週刊誌がいるんじゃないだろうな。

そんな疑念を持ちつつも、閑職への異動辞令を機に会社を辞め、何も失うものがなくなった敏郎は、半ば開き直って彼女の誘いに乗った。

彼女が指定したのは恵比寿の『マディソンニューヨークキッチン』の半個室。記者や関係者もおらず、2人だけだという空間に敏郎は安堵した。

「一方的に悪者にしてすみません。敏郎さんが強引で断れなかったというのは本当ですけど、それだけじゃなかったんです」

「それだけじゃない、って…?」

「敏郎さんと交際しはじめた時、仕事につながるかもっていう下心があったのは事実です。つまり、自らの意志というか…」

優里菜は、ずっと泣きながら謝罪していた。

要するに、自分の言い逃れのせいで、敏郎が会社を辞めるまでになったことに罪悪感を抱いているというのだ。

ただ、本当にセクハラで苦しんでいる人たちや、今後のためにもこの嘘は公表できないのだという。

「敏郎さんがよければ、全て私が責任を取ります。本当にすみません」

優里菜のその宣言がきっかけで、極秘に復縁。そして無事に結婚し、今に至る。

敏郎は、優里菜がこんなに野心家でたくましい女性だとは思ってもみなかった。

―読モ上がりの腰掛けタレントだと思っていたのに、今やテレビでも活躍するトップモデルだもんなあ。


今では優里菜の夫が、週刊誌を賑わせたテレビ局員と同一人物であることは伏せられ、フリーの映像クリエイターということになっている。

ただ現在の敏郎は、優里菜のYoutubeチャンネルの演出と編集作業の仕事しかしていないため、あながち嘘ではないのかもしれない。

―優里菜を成長させたのは、俺なのかもしれないな。

かつて自分が優里菜に対し思っていた「女性として成長させたい」という言葉を、敏郎は思い返した。

そして、改めて気付く。女性、いや人間は、一面では測れないということを。

スキャンダルの時でさえ、“敏郎がセクハラをした”という部分だけがセンセーショナルに表に出ていたものの、実は優里菜が言っていた通り、別の側面もあった。

明子だってそう。

あのインスタは彼女にとってむしろオモテの世界で、敏郎と暮らしていた生活がウラの世界だったのだ。

敏郎は、久々に明子のインスタを検索してみる。

ジッと見ていると、相変わらずの煌びやかな生活に目の前がクラクラして、すべてにおいてゲシュタルト崩壊が起こった。

彼女の『@emodaw_sihrtoa』というアカウント名も、文字が分解されて見える。

…すると、とある言葉があらわれたのだった。

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