2020.07.17
コンパス〜28歳、人生の羅針盤〜 Vol.2ー私の迷った時の羅針盤(コンパス)は、『親が望む道かどうか』。
大企業の役員を務める父親と専業主婦の母親の間に長女として生まれ、幼い頃からたくさんの習い事をして塾にも通い、受験をした。
その後はエスカレーターで大学まで進み、人気の会社に入社した。
大学を卒業してからも厳しく言われ続けた「21時」の門限だって、社会人になって一度も破ったことはない。
髪色も洋服もメイクも、「親が好きそうか」どうかが判断基準。
ー親に歯向かった時、どんなことになるか想像するだけで背筋が凍るもの。…そもそも、歯向かったって無駄だもの。
すみれにだって反抗期はあった。
女子校に通っていた高校生の頃、見た目が派手な彼氏が出来て、当時の門限を破ってデートをしたことがあった。
「誰と何してたの。携帯貸しなさい」
家に帰ると、激怒した両親が玄関で待っていた。
その場で母親はすみれの携帯を奪い取ると、着信履歴から彼氏に電話をし、冷たい口調で言い放った。
「うちの子ともう二度と会わないでちょうだいね。連絡先も、消します」
それまで見たことのなかった、両親の怒り狂う様も恐ろしかったが、その後の両親の顔つきを、すみれは未だに忘れることができない。
「あなたには心底失望した」。氷のように冷たい表情はそう物語っていた。もう決して歯向かわないと誓った出来事だった。
ーそんな両親が、隼人のことは気に入ってくれたもの。
「彼氏が出来たらすぐに私たちに会わせなさい」という両親の言いつけ通り、大学時代、隼人と交際開始した1週間後には両親との「面接」を済ませた。
両親ウケがよさそうだと思い、隼人を選んだ。すみれの計画通り、親には好評だった。
幼い頃から、親に言い聞かされていたことがある。
「女の子はね、結婚して家庭を持つことが一番幸せなのよ。でもね、教養も学歴も社会経験も、あるに越したことはないの」
そのセリフを疑ったことは一度もない。
それを体現するように、専業主婦の母親はいつも幸せそうだったから。父親も、ひたすら真面目に働き、平日は必ず夕食の時間に帰ってくる。だけど父も、母の隣でいつも満足げだったから。
「結婚は早い方がいいわよ。タイミングがきたら、迷わず決めなさい」
「すみれ、お父さんみたいないい旦那さんを見つけて、しっかり支えてあげるんだよ」
ー仕事をやめて隼人と結婚すれば、親が喜ぶわ。
隼人と婚約して新潟について行こうと思う、と両親に報告すると、予想通り「それがいい」と二人とも喜んでくれた。
しばらくして第一子を授かり、子育てに奮闘する毎日。だが常に、すみれの頭の中には両親の存在があった。
離れて暮らしていても、両親とのテレビ電話は日課だし、何かにつけて両親は新潟までやってくるのだ。
◆
愛莉とのランチから、何日か過ぎた。実家に数日滞在したすみれは、新潟に戻り、いつもどおりの日常を過ごしていた。
娘が寝た後に、日課になっているSNSのチェックをする。すると、学生時代の友人・リサのインスタグラムの投稿が目に止まった。
ーリサ、懐かしいなあ。元気にしてるかしら…。
リサは大学時代、両親に勧められて1年間留学した先のアメリカの大学で知り合った。
ーそういえばリサには、「すみれは自分の意思、ないの?ずっと親の言いなりでいいの?」って言われたこと、あったなあ。
お互いの将来の話をしている時にそう言われて、ショックを受けた記憶がある。リサは意思がハッキリしており、親を軸に生きているすみれとは別世界の人に見えていた。
インスタの画面には、現在アメリカで暮らすリサの華やかで自由な生活を切り取ったような投稿が並んでいる。それらを見ていたら、あの日リサに言われた言葉が、再び蘇ってきた。
ー親の言いなりの人生で、本当にいいの?
「反抗しても無駄だから。親がよければ、それでいいの」
すみれは小さく微笑むと、声に出してそう呟いた。
▶前回:年収1,300万の美女が、交際中の男を捨てた残酷な理由
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リサがアメリカに移住を決めたそのワケは?
※本記事に掲載されている価格は、原則として消費税抜きの表示であり、記事配信時点でのものです。
自分の周りだと、親が会社役員とか社会的に立場が高い人ほど、これからのサラリーマンの厳しさ、日本の経済の厳しさを分かってるから、旦那頼みじゃなく女の子でもしっかり稼いで自立できるように促してるかんじするよ。
歯向かうだけ無駄とか、失望させたら怖いことされるとか、そういう支配の元って不健全すぎ。
洗脳なんだろうなぁ。
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