2014.01.21
森脇慶子の「旬カレンダー」 Vol.10ふぐをして、天下唯一の美味、摩訶不思議の絶味――こう評しているのは、かの北大路魯山人。著書『料理王國』では、鯛や松茸、フォアグラといった数ある美味も、ふぐの旨さには叶わないとまで絶賛している。体に毒を秘め、死のリスクを持ちながらもその味を愛でたのは、古の日本人も同様だったようで、縄文時代の貝塚からもふぐの骨が出土されている。
世界中で約120種棲息するフグ科の魚のうち、食用とされるのは僅かに22種。中でも、美食家をも魅了したのが、天然のとらふぐである。
それも「重さにして2㎏前後、2〜3年もののとらふぐのシロが旨みも乗り一番。うちではこれしか扱いません」とは、『赤坂鴨川』の女将、大菅孝子さん。それを2〜3日寝かせ、更に熟成させることで、上質なふぐならではの枯淡の美味とでもいうべき、深奥にして陰影に富む旨味が生まれるのだ。
その醍醐味を味わうなら、刺身より鍋がふさわしい。煮込むほどにアラや骨から滲み出る淡いながらも力強い味わい、そしてねっとりと官能的なゼラチン質の旨さは、鍋なればこそ。ふぐの真価が分かる逸品である。
●もりわきけいこ
美味の食べ歩きに日々邁進し、綿密な取材と豊富な経験に基づく記事で定評のあるフードライター。真の旬を伝えるべく、その時期とっておきの美味にありつける名店を紹介
この記事で紹介したお店
赤坂鴨川
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