夏の恋 Vol.4

夫が突然、家を出て行った。1年後、その本当の理由に気づいた妻が取った行動とは…

今年も、夏がやってきた。

青い空、燦々と降り注ぐ太陽。そしてバケーションへの期待。夏はいつだって、人々の心を開放的にさせるのだ。

そんな季節だからこそ、あなたは“夏の恋”を経験したことはないだろうかー?

東京カレンダーのライター陣が1話読み切りでお届けする、サマー・ラブストーリー。

先週紹介したのは、夏になると、夫ではないある男のことを思い出す妻の物語。さて、今週は…。


昨夜まで続いていた雨が嘘のように、空は青く澄み渡り、太陽がジリジリとアスファルトを照りつけている。

外に出るとまたたく間に、湿気を帯びた重苦しい空気が肌にまとわりついた。地下鉄の広尾駅の2番出口で、樹里は思わず顔をしかめる。

まもなく梅雨が開け、いよいよ本格的な夏がやってくる。

樹里は子どもの頃から、この季節が大好きだった。もうすぐやってくる夏休みへの期待。なにか面白いことが始まろうとしているようなワクワク感。

大人になっても、それは変わらなかった。年々蒸し暑さは確実に増している気がするのに、新しい季節の到来が待ち遠しくて仕方ない。

夏の夕方の空気を吸い込むと、胸の奥がキュッと締め付けられる。なぜならそれは、樹里が佑太郎と恋に落ちた季節だから。

佑太郎と出会ったのは、5年前の夏。

そしてその1年後に二人は結婚したが、結婚式も7月だった。だから樹里にとって、夏は幸せの象徴みたいな季節なのだ。

ちょうど昨年のこの時期も、樹里は大好きな夫と過ごす夏を心待ちにしていた。

—今年の夏は、何をしよう?

佑太郎と海に出かけたり、一緒に浴衣を着て花火大会に行ったり、夏季休暇に贅沢なリゾートでのんびり過ごしたり。

だが、そんな日々が訪れることはなかった。

夫が、突然別れを告げて出ていったのだ。

2019年、7月。あの日を境に、樹里の人生の時計の針は止まったままだ。

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