夏の恋 Vol.3

15歳年上の“あしながおじさん”からの、夜の誘い。決断を迫られ、25歳女が取った行動

今年も、夏がやってきた。

青い空、燦々と降り注ぐ太陽。そしてバケーションへの期待。夏はいつだって、人々の心を開放的にさせるのだ。

そんな季節だからこそ、あなたは“夏の恋”を経験したことはないだろうかー?

東京カレンダーのライター陣が1話読み切りでお届けする、サマー・ラブストーリー。

先週紹介したのは、もう二度と取り戻せない恋を悔やむ男の物語。さて、今週は…。


「なんか、花火大会がない夏って寂しいよな」

平日の朝8時。

在宅勤務に切り替わり、夫と2人で食卓につくことが普通になった日々の中で、季節はようやく初夏を迎えようとしていた。

朝のTVから、全国の花火大会が続々と中止になったことで、その代わりとして予告なしの花火が打ち上げられたとのニュースが流れている。

「…もう30だから、花火ではしゃぐ歳でもないけどね」

そう言いつつ、私は、ふいに5年前の夏の記憶を思い起こしていた。

夫の賢一に出会う前、腰かけOLだった私が足を踏み入れようとしかけた恋。

あのとき、私は人生で初めて花火大会の中止を願った。

どうか、“彼”に会いに行くべきか決断を迫らないでほしい―。大雨でも降って、私が決断をせずとも、すべて流れてしまえばいいのに。


「…紗季?ぼんやりして、どうした?」

夫の声にはっと我に返り、慌てて笑顔を浮かべる。

「来年は…3人で見られるといいな」

私のお腹の中には、妊娠7ヵ月目の命が宿っている。

最近は活発に動き始めた小さな命の将来に想いを馳せるばかりで、私自身のこと、特に恋愛についてなど、考え込む時間は全くなかった。

だから、“花火大会”その単語ひとつで、今さらあの夏を思い出すことが不思議で仕方がない。

私は、交際人数としてカウントすることもなく、今後時効がきたとしてもわざわざ夫に話すこともないであろう人のことをそっと思い出していた。

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