SPECIAL TALK Vol.69

~「やりたいことを、まずはやる」真っ直ぐな熱量があったから今がある~

ホームページ制作で得た20万円が人生を決めた

金丸:間下さんは19歳で起業されていますが、何かきっかけがあったのですか?

間下:大学は慶應義塾大学の理工学部に進学したのですが、実は入学の時点では、起業なんてまったく頭にありませんでした。高校時代は水泳に打ち込みバイトができなかったので、大学では普通じゃない、面白いバイトをしたいと思っていました。そんなとき、ホームページ制作の仕事を見つけて、2週間かけて作ってみたら、20万円もらえたんです。

金丸:学生にとっては大金ですね。

間下:嬉しかったですね。当時ホームページ制作の費用は、200万円くらいかかるのが一般的でした。なので、依頼した企業からみれば10分の1の20万円で済み、学生の僕にとっては20万円の収入になる。お互いwin‐winです。その後は口コミで受注が増えて、人手が足りなくなり、大学の友達や高校の同級生を引っ張り込んで97年に起業しました。当然オフィスなんて無いので、ファミレスに集まって会議して、給料なども手渡ししていました。ただ、ずっとファミレスというわけにもいかないし、税務処理の問題もあるので、98年に法人化しました。

金丸:周りのお客さんは「あのテーブルは何をやってるんだ」と思ったでしょうね(笑)。社名の「ブイキューブ」はどんな意味があるのですか?

間下:「バーチャル」「ヴァリアブル」「ベンチャー」、という3つの「V」が由来です。最初は「ブイキューブインターネット」と、インターネットがついていました。

金丸:ところで、これまでのお話のなかに、理系進学に至るようなエピソードが出てきていないのですが。

間下:実は父がIBMに勤めていたんです。エンジニアとして入社した後、営業も担当していました。子どもの頃から家にコンピュータが当たり前のようにあったし、IBMのボーナスがパソコンの現物支給というときもありました。それが僕にとって初めてのパソコンでしたね。

金丸:そうだったんですか。子どもの頃からパソコンに触れる機会があったとは、すごいアドバンテージだ。

間下:そういう環境がなかったら、今の僕はいないかもしれません。それに、父は大企業にいながら、新規事業の開発に取り組んでいて。

金丸:では、ベンチャースピリットはお父様由来のものなんですね。

間下:そうですね。ちなみに父は早期退職したあと、ブイキューブに社員として入社しています。

金丸:それはすごい!

間下:企業内ベンチャーとして立ち回っていた経験を持つ父のおかげで、大企業にも入り込んで拡大していくという当社の特殊なポジションを築けたと感じています。

自分たちに必要だったから、ウェブ会議システムが生まれた

金丸:在学中に起業して、そのままブイキューブ一本でやっていくつもりだったのでしょうか?

間下:大学院の1年生くらいまでは、まだ就職する気でいましたね。そもそもうちの家系は、父はIBMだし、父方の祖父は銀行、母方の祖父は国鉄で。

金丸:かなり堅いですね。

間下:ガチガチ系です(笑)。周りもみんな就職するし、就職するのが当たり前だと思っていました。でも1年生の終わりくらいに、「いや待て、社員がいるぞ。やめられないよな」と。数人の正社員とアルバイトという規模でしたが。

金丸:間下さん自身の都合というより、社員のことを考えたんですね。ご両親から反対されませんでしたか?

間下:最初は反対していましたけど、ちゃんと売上もあり、会社としてやっていけそうなことはわかっていたので、そんなに強く反対されませんでした。

金丸:私の場合は、社会人経験があったほうがいいと思ったのと、間下さんみたいに大学のときには起業のアイデアがなかったので、最初は就職しました。でも、起業という選択肢があることを、日本の学生にはもっと知ってもらいたいですね。

間下:そうですね。昔に比べると、今は法改正が進んで起業しやすい社会ですから、興味を持つ学生が増えてほしいです。

金丸:ホームページ制作から始まって、その後、どのような事業展開をされたのでしょう?

間下:システム開発の受託が多かったですね。それから、オンラインのカレンダー。今でいうグーグルカレンダーのようなシステムを作っていました。

金丸:確かに、一時期オンラインカレンダー事業は流行しましたね。

間下:カレンダーサービスは、ユーザー数が10万人規模に育ったのですが、まったく利益が出ませんでした。それも当然で、その頃はどうやって利益を出すかということをあまり考えていなかったし、方法論も理解していなかったので。

金丸:技術力だけあっても、ビジネスはうまくいきませんからね。

間下:そのカレンダーのアプリをアメリカで展開しようと考えまして。そのとき困ったのが、日本とアメリカでどうやってコミュニケーションを取るかということでした。テレビ会議システムはかなり高価で、とても手が出ません。そこで、自分たちでシステムを作ることにしました。

金丸:それが、今の事業につながるわけですか?

間下:はい。カレンダーサービスもそうだったのですが、創業以来、自分たちが欲しいと思うサービスが見つからなければ、作るというスタンスです。

金丸:他人が作ったものだと、「何か違うんだよな」ということもありますが、自分で作ったら、とことん自分好みにできますからね。

間下:おっしゃるとおりで、まず自社内で試したことで、「もっとこうしてほしい」と社員が好き勝手に言う(笑)。おかげで、世に出す前にかなりブラッシュアップできました。正式にリリースしたのは、2004年です。

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