2020.05.21
SPECIAL TALK Vol.68海外の主流に合わせず、日本の強みを生かし勝ち続ける
金丸:決死の覚悟で世界に挑んだ結果は、どうでしたか?
石原:右も左もわからない状態でしたが、その年の最高賞に該当するシルバーギルトメダルをいただくことができました。
金丸:初出場でいきなり最高賞ですか?
石原:ありがたいことに。庭の順位は、5段階の点数制で評価されます。最上位はゴールドとシルバーギルトの2種類のメダルがあって、その年はゴールドに該当する庭がありませんでした。
金丸:石原さんの作品は、どんな部分が評価されたのでしょうか?
石原:イギリス式の庭は花をいっぱい植えます。だから僕は逆に、花を1本も使いませんでした。しかも、かつて長崎の出島からヨーロッパに渡った紅葉やツツジなどの植物で、庭のベースを作りました。
金丸:長崎出身の石原さんがそれをやるというのは、またストーリーがありますね。
石原:もうひとつ「循環」というテーマも込めました。雨が降り、森林に溜まった水が川から海へと流れて蒸発し、また雨として降り注ぐ。生まれ育った長崎の原風景を庭で表現したいと思い、清らかな水辺に雑草を茂らせ、さらに石畳や松の盆栽も組み込んだ作品に仕上げました。
金丸:そんな独創的な庭、チェルシーの人たちも見たことがなかったのでは?
石原:みなさん、「えっ!?」という感じでご覧になっていましたね。ただ、ゴールドメダルじゃなかったので、審査員に「なぜですか?」と聞いたんです。すると「ラブリーさがない」という答えでした。
金丸:それはどう解釈すればいいんでしょう。
石原:僕は「花が足りない」ということだなと考えました。でも、僕の庭にバラは似合わない。自分の記憶をたどると、畑の隅にいつもアヤメが咲いていたのを思い出しました。小さな原種のアヤメです。次はこれをチェルシーで咲かせたいと。
金丸:では、翌年にアヤメで挑戦を?
石原:いいえ。連続出場する資金はなかったので、翌年の2005年はとにかくお金を貯めてスポンサーを集め、2006年にアヤメを咲かせるべく再出場しました。アヤメは6月に咲く花ですが、審査が行われるのは5月23日の朝の7時半。その時間にちょうど咲いている状態を作らなければいけません。
金丸:多少の調整はできるでしょうけど、どうやって時間ぴったりに咲かせたのですか?
石原:温室に入れただけでは分単位の調整はできないので、暖房をガンガンに効かせた部屋から出し入れして微調整しました。大変でしたけど、その結果、ゴールドメダルをいただきました。しかも、そのなかでも「ベストガーデン」という最高栄誉の賞です。
金丸:絶対に世界一になると決めて、本当に世界一になってしまうとは。しかも2度目の挑戦で。
石原:でも、日本に帰って「チェルシーでゴールドメダルを受賞した」と言っても、「え、なに?」という反応で。「チェルシーって飴の話?」とか、「世界一? まぐれでしょ」という人も。「だってもともと石原くんって、庭とか知らんでしょ」と。
金丸:せっかくゴールドメダルを取ったのに、そんな反応とは(笑)。
石原:だから僕は、出場し続けてやろうと決めました。出続けて、エリザベス女王から「あなたが世界一よ」というお言葉をいただければ、誰も文句を言えないはずだと。
金丸:そこでめげずに続けようと切り替えられるのが、すごいですね。
石原:われながら無謀なチャレンジだと思いましたよ(笑)。でも実際に14年出場し続けて、11回ゴールドメダルを取りましたから。
金丸:そこまでやれば、石原さんが世界一だということに異論は出てこないでしょう。
石原:やっと世界中の方から依頼してもらえるようになりました。
【SPECIAL TALK】の記事一覧
2024.11.21
Vol.122
~自分の体を認めることが、自分を好きになるための第一歩になる。~
2024.10.21
Vol.121
~スポーツの喜びをより多くの人が体験できるよう、これからも挑戦はやめない。~
2024.09.21
Vol.120
~日本の農業が続くための仕組みを作り、アップデートできるよう挑み続ける~
2024.08.21
Vol.119
~すべてを制覇したい気持ちは変わらない。経営陣になっても燃えたぎる闘志がある~
2024.07.20
Vol.118
~歌舞伎役者を夢見た少女だから、歌舞伎役者の母としてできることがある~
2024.06.21
Vol.117
~1杯で幸せになる利他的なコーヒーを目指して~
2024.05.21
Vol.116
~多くの人の期待と希望を背負う街づくりほど、面白い仕事はない。~
2024.04.19
Vol.115
~この楽器だからこそできる表現を。歴史ある箏を武器に世界を目指す~
2024.03.21
Vol.114
~勝負の気持ちから感謝の気持ちに。青森の伝統を守り、盛り上げたい~
2024.02.21
Vol.113
~学問という知的な武器を子どもたちに。学びの体験をアップデートして日本を変える~
おすすめ記事
2020.04.21
SPECIAL TALK Vol.67
~ネガティブなマインドでは何も勝ち取れない。自分を信じ通すことが、勝負強さの鍵になる~
- PR
2024.11.20
銀座で女性と過ごす夜。アイリッシュウイスキーが引き寄せた、2人だけの密やかな高揚とは
2016.05.19
この手があった!1か月超ステイなら高級サービスアパートメントという選択肢
2024.02.29
プロ★幹事
「コスパが良くて、特別感があって絶品!」歓送迎会の参加者全員が喜ぶ、銀座・丸の内の店3選
- PR
2024.11.18
総勢100名に当たる!西友&東急ストアで「スプリングバレー」を買って東カレ厳選グルメをもらおう!
- PR
2024.11.21
クリスマスは絶景を望むホテルデートへ!彼女がワッと喜ぶ、とっておきの夜を丸の内で過ごすなら…
- PR
2024.11.22
渋谷在住の29歳OLが自分へのご褒美に♡と、奮発したあるモノとは?
2015.12.17
年末年始のキメの接待はここで!相手を絶対に唸らす和食の名店4選
- PR
2024.11.22
2024年の締めくくりはこれで決まり! 美味でゴージャスな「アメリカンビーフ」を楽しめるステーキハウス4選
2016.02.01
中国ビジネス関係者必携!日本で唯一の中国歳事が全網羅のカレンダー登場
東京カレンダーショッピング
『佐藤養助商店』:門外不出の技による、喉ごし滑らかな"稲庭干饂飩"
『かに物語』:ふっくらと肉厚な一本爪が2本入ったフレンチカレー
『西岡養鰻』:特製タレ付き!脂の乗った高品質な鰻を土佐備長炭で丁寧に焼き上げた蒲焼
『マルヒラ川村水産』:ご飯に載せて贅沢いくら丼!1粒1粒に旨みが凝縮された、とろける食感の北海道函館産天然いくら
『North Farm Stock』:北海道産ミニトマト使用!糖度が高く、コクとうまみがたっぷり詰まったトマトジュース
『ル・ボヌール 芦屋』:フリーズドライフルーツにホワイトチョコがたっぷりと染み込んだ新感覚スイーツ
『HAL YAMASHITA 東京』:シルクのようななめらかさ!冷え冷えトロリの新食感"ウォーターチョコレート"
ロングヒット記事
2024.11.18
恋のジレンマ
アプリで出会った女性と初デート。女が困惑した、男が渡した妙なプレゼントとは
2024.11.22
年収4,000万男子の恋愛事情
結婚に焦る31歳女が犯した致命的ミス。せっかくハイスペ彼氏ができたのに…
2024.11.21
かわいく生きられない女たち
毒吐き用のSNSアカウントが、彼の親にバレた!慶應幼稚舎出身、27歳女の裏の顔とは
2024.11.23
男と女の答えあわせ【Q】
「1日2回は多い?」付き合う前のアラサー男女。適度な連絡頻度の正解は?
2024.11.20
東京レストラン・ストーリー
原宿のおしゃれな2LDKで「ルームシェア」する24歳女。でも、現実は一緒に住むのは難しくて…