2020.05.21
SPECIAL TALK Vol.68石原:それが、とても喜んでいただけました。当時は家の周りの庭に花を植えるというのは一般的ではなかったんですが、僕にできるのは花しかない。セメントの混ぜ方をホームセンターで習って庭にレンガを並べ、流木や壺をあしらってたくさんの花を植えました。
金丸:庭を作るというよりも、フラワーデザインに落とし込んだんですね。日本の庭は樹木が中心ですが、花があるとアレンジの幅が広がりますよね。
石原:もちろん木も植えますが、僕の場合、植え方も剪定も植木屋さんとはちょっと違います。木は普通、まっすぐ植えますよね。でも盛り土をして横向きに植え、剪定を工夫すれば、それだけで何十年も経た庭のように見せることができます。
金丸:なるほど。同じ木でも、見せ方ひとつで全然違ったものになる。まさに生け花だ。石原さんの強みを最大限に生かした庭づくりの誕生ですね。
石原:しかも、庭は花よりも単価がいい。花屋で1日10万円売り上げれば大したものですが、庭だとごく普通の価格です。僕には借金返済があったので、庭づくりの材料に流木などを活用して原価を抑え、利益率を上げる工夫をしました。ただ、見た目も安っぽくなってしまったら元も子もない。100万円で仕事を受けたら、500万円の庭に見える仕事をしようと心に決めて励んでいたら、口コミで庭の仕事が次々に来るようになり、単価も50万円、100万円と上がっていきました。
金丸:たまたま手にしたチャンスを見事ものにした。それが今につながるのだから、人生、何があるかわかりませんね。
「なんとしても世界一に」。本場イギリスへ乗り込む
金丸:庭の仕事が増えていくなかで、石原さんはどのような点にこだわったのですか?
石原:一番こだわったのは、生産性です。庭づくりにはいろいろな技術が必要なので、職人が大事だし、うまくやっていかなきゃいけない。でも、職人の「こうしたい」という思いと、お客様がいいなと感じるものが必ずしも一致するとは限りません。実際のところ、しょっちゅう喧嘩になりました(笑)。でも、もともと工業大学出身だったので、工場管理と同じ考え方で、デザイン性を落とさずどうやって労働時間を短縮するかを考えるのは得意でした。
金丸:トヨタ生産方式を庭づくりに導入したようなものですね。
石原:そうですね。あとこだわったのは、ブランド化です。長崎だけでやっていても限界がある。目を付けたのが『TVチャンピオン』(毎週、テーマごとに参加者が腕を競い合うテレビ番組)でした。出演するために、「長崎にすごいのがいるよ」と社員に電話してもらって。
金丸:それって、サクラじゃないですか(笑)。
石原:すぐバレました(笑)。でも、制作側が面白がってくれて出演させていただきました。おかげで出演後の1年間は仕事が舞い込んできましたが、作業単価は頭打ちです。どうすれば単価を上げられるのか考えましたね。たとえばハリウッドスターは、何億円という庭を個人で発注します。そういう仕事を受けるにはどうしたらいいのだろう。それで、「じゃあ今度は、世界一の庭園デザイナーを目指そう」と決めたんです。
金丸:さらっとすごいことをおっしゃいますね(笑)。
石原:いろいろ調べるうちに、「チェルシー・フラワー・ショー」の存在を知り、2003年に初めて見に行ったのですが、池坊と出合ったときと同じくらいの衝撃でしたよ。今まで見たことがないような庭ばかり展示されているし、しかも、モナコの王子やアラブの石油関係者、ファンド関係者など、庭師にそれぞれスポンサーが付いている。BBCは朝から晩までフラワーショーの様子を放送しているし、その番組の司会者まで庭師だったんです。
金丸:日本だと想像できない、すごい世界ですね。
石原:すごいですよ。ガーデニングに関して言うと、日本の市場は2,300億円ですが、イギリスは4兆円。市場規模は日本の約17倍です。トップガーデナーともなると自家用ジェットで世界中を飛び回って、庭づくりとメンテナンスを行っていると聞き、まさに世界の違いを目の当たりにしました。
金丸:でも、石原さんは世界が違うからと諦めることなく、挑戦するわけですよね。
石原:はい。ただ、出場するには日本から職人を連れていく必要があり、規模の小さなカテゴリーでも最低5,000万円はかかります。
金丸:とんでもない額ですね。では、スポンサーを探して出場を?
石原:いえ、2004年の初出場は自腹です。
金丸:えっ! だって、まだ返済が……。
石原:そうです。だから、家も売りました。
金丸:すさまじい覚悟です。
石原:世界一を本気で目指そうと思っていましたから。借金を抱えた、ただの長崎の花屋でいる限り、現状は打破できません。だから絶対にチェルシーで優勝しようと勝負に出たんです。
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