2020.05.21
SPECIAL TALK Vol.68独立、被災、再起。そして全国チェーン経営へ
金丸:その後、どうされたのですか?
石原:生け花を習いつつ、路上販売の花屋でアルバイトをして修業しました。そこで商売の基本を身に付けて24歳で独立し、実家の牛小屋を改装して仲間と3人で、念願の花屋を始めたんです。
金丸:かなりスピーディーな展開ですが、うまくいきましたか?
石原:それがうまくいき始めた矢先に、長崎大水害が起きまして。300人近くが亡くなり、そのなかには一緒に花屋を始めた仲間もいました。
金丸:そんなつらいことが……。
石原:水害で長崎の街は破壊されてしまい、花屋を続けられる状態ではなくなって。結局もうひとりの仲間は辞めてしまいました。
金丸:石原さんひとりになってしまったんですね。
石原:そうですね。でも僕は絶対続けたいと思っていた。だから長崎を離れ、日本中の花屋を見て回りながら修業しなおし、29歳で長崎に戻って、花屋の路上販売を再スタートさせました。長崎の街には立地のいい場所に花屋がないから、路上販売でもいい立地さえ確保できれば、勝機があると考えたんです。
金丸:ちょうどその頃は、バブルに沸いていた時期ですよね。
石原:そうです。1980年代後半ですね。普通に店舗を借りるのは厳しかったけど、街の至るところに隙間はありました。最初に目を付けたのも、自動販売機が置いてあるスペースです。
金丸:自動販売機のスペースって、隙間にしても随分狭くないですか?
石原:いや、花の販売は1メートル四方あればできますから。
金丸:路上販売の経験があったから、そういう発想ができたのでしょうね。
石原:実際に花屋を始めると、どんどんお客様が増え、店舗数もどんどん増やしていきました。らせん階段の下やビルの入り口など、いろいろな隙間に出店しましたね。そこからはもう売上が直角に上がって、最終的に北は仙台、南は沖縄まで全国で80店舗にまで広げました。さらに商社と組んで、ベトナムと中国でバラとカーネーションを生産するまでになりました。
金丸:すごいですね。私のなかで石原さんはアーティストという位置づけだったので、経営者としての過去は全然知りませんでした。
石原:大昔の話ですから(笑)。
金丸:そのお店の経営には今も携わっているのですか?
石原:それが、今度はバブル崩壊の直撃を受けたんです。店舗は全部社員に渡し、一気に8億円の負債を抱えることになりました。
金丸:それは痛い。
石原:当時組んでいた商社からは、「うちで負債を全額かぶってもいい」というありがたい言葉もいただいたんですが、僕にも意地があるので、「いや、僕が全部背負います」と。
金丸:かっこいいけど、簡単な話じゃないですよね。
石原:店舗や不動産をいくつか売却して負債を4億円にまで減らし、それを10年かけて返済するという計画を立てましたが大変でした。
莫大な負債を抱えながら、庭づくりという新たな領域に
金丸:10年で4億円となると、相当稼ぐ必要がありますが。
石原:毎月1,000万円の粗利を出さないと破綻です。まさに崖っぷちからの再スタートでした。
金丸:そんな状況で、よく投げ出しませんでしたね。自己破産という手だってあるじゃないですか。
石原:妻も子どももいましたから、とても苦しかったのは確かですが、でも「借金をちゃんと返したら、絶対にいいことがある」と信じて、必死で働きましたね。ただ、きつかった。親の土地を一部売ったのは悔しかったし、子どもの同級生の親が銀行の担当者で、抵当に入れたわが家を測りにきたこともありました。
金丸:この難局をどうやって乗り越えようと考えたのですか?
石原:営業マンもいないたったひとりの状態なので、花のビジネスでどうやって稼いでいくかを日々考えました。そして生き残るためには、目の前のお客様をシビれさせるしかないと思ったんです。
金丸:お客様をシビれさせると。
石原:ほかの花屋と同じ次元の感動では勝てません。圧倒的に喜んでいただかないといけない。とはいえ、ひとりでできることはたかが知れています。何か方法はないかと探していたとき、お得意様から「石原くん、庭はできるの?」と聞かれて、「はい、得意です!」と即答しました。
金丸:えっ? 得意だったんですか?
石原:いや、それまでやったことはありません。
金丸:すごい度胸だ(笑)。勢いで受注して、結果はどうでした?
【SPECIAL TALK】の記事一覧
2024.03.21
Vol.114
~勝負の気持ちから感謝の気持ちに。青森の伝統を守り、盛り上げたい~
2024.02.21
Vol.113
~学問という知的な武器を子どもたちに。学びの体験をアップデートして日本を変える~
2024.01.19
Vol.112
~庭師として素晴らしい日本文化を守り、次の世代へと伝えていきたい~
2023.12.21
Vol.111
~いつだって新しい人に出会いたい。シンプルな好奇心が新たな交流を生んだ~
2023.11.21
Vol.110
~自分が飲みたい日本酒で世界に挑戦し、日本酒業界に革命を起こしたい~
2023.10.20
Vol.109
~世界で一番愛される字を書きたい。世界を舞台に活躍する書道家へ~
2023.09.21
Vol.108
~ピアノや音楽をもっと自由に、多くの人が慣習にとらわれず楽しんでほしい~
2023.08.21
Vol.107
~未曽有の事態に直面して生まれた医療の新しいカタチ~
2023.07.21
Vol.106
~日本における医療の弱みはウェルビーイングの浸透で改善できる~
2023.06.21
Vol.105
~現役復帰した今だからできることがある元オリンピアンとして伝えたいスポーツの力~
おすすめ記事
2020.04.21
SPECIAL TALK Vol.67
~ネガティブなマインドでは何も勝ち取れない。自分を信じ通すことが、勝負強さの鍵になる~
- PR
2024.03.28
「運転中、彼の●●なところにキュン!?」ドライブデートに関する東カレ女子の赤裸々な本音
2015.10.01
究極の接待は超名店の貸切!貸切OKの名店5選
2017.02.24
TBS&博報堂社員に聞いた、赤坂でリアルに通う名店8選
- PR
2024.03.27
海外セレブの間で「テキーラで乾杯」が流行中!お祝いの席にぴったりな、ラグジュアリーテキーラとは
- PR
2024.03.26
GWの予定はもう決めた?北海道&沖縄で絶大に支持されるリゾートホテル4選
2015.11.27
金曜美女劇場
伝説と呼ばれた銀座の美ママが語る“出世する男”の条件とは?
2021.01.13
「サクッと一杯ならココ!」覚えておくと便利な目黒・権之助坂の店6選
2023.08.02
ハラスメント探偵~解決編~
「あんた、バカじゃないの!」思わず新入社員の腕を掴み、怒鳴ってしまった!これってパワハラ?
2023.08.16
ハラスメント探偵~解決編~
ランチに食べていた“あるもの”の臭いが物議に。果たして、悪臭はハラスメントになる!?
東京カレンダーショッピング
『秋田かまくらミート』:秋田を代表するブランド牛「秋田由利牛」!サシの美しい上質なしゃぶしゃぶ用サーロイン
『肉のABCフーズ』:黒トリュフ塩付!牛タン&A5ランク黒毛和牛を使った極上ハンバーグ
『パンツェロッティ』:具材ごろごろボリューミー!フレッシュな野菜と肉感満載のフライドピッツァ
『HAL YAMASHITA 東京』:シルクのようななめらかさ!冷え冷えトロリの新食感"ウォーターチョコレート"
『レザンファンギャテ』:しっとりと濃厚で、コクのあるニューヨークスタイルのチーズケーキ
『ル・ボヌール 芦屋』:しっとりサクサク!フリーズドライ苺にホワイトチョコをたっぷりと浸透させた新感覚スイーツ
ロングヒット記事
2024.03.18
「そういうとこ」で振られる男
「元カノと復縁できるかも」と喜ぶ34歳男。タイ料理店でデート中、彼女の表情が曇り…
2024.03.19
Editor's Choice~fashion~
感度の高いイマドキ女子から大人気!モネ“睡蓮の池に架かる橋”がフェイラーのキュートなハンカチに
- PR
2024.03.21
Editor's Choice~beauty & wellness~ 特別編
仕事もプライベートも充実している人ほど、〇〇投資している!?当たり前すぎて意外な生活習慣とは
2024.03.22
大人の週末ToDoリスト
長澤まさみ出演の映画や、バンクシーの展示…今週末いくべきイベント3選
2024.03.24
Editor's Choice~hotel~
シャンパンのフリーフローをテラスで堪能!渋谷の最新ホテルで叶う華やかな女子会