14日間の恋人 Vol.12

「彼がこんな男だったなんて」。結婚した3日後に、妻が明かした夫に対する本音とは

ひとり旅をするとき、こんな妄想をしたことはないだろうか。

―列車で、飛行機で、もし隣の席にイケメンor美女が座ったら…?

そして、妄想は稀に現実になる。

いくつになっても忘れないでほしい。運命の相手とは、思わぬところで出会ってしまうものなのだと。

傷心旅行に発った及川静香は、素性の知らない男と恋に落ちるが…。出会いから、別れまで、たった14日間の恋の物語。

◆これまでのあらすじ

静香は元カレに別れを告げられ、ハワイへ一人旅に出る

偶然に知り合った勇作に運命を感じるが、その出会いは元カレ・健次によって仕組まれたものだった…。


Day12,2019年6月19日。


9時30分、ハレイワを流れるアナフル川。

緑に囲まれた両岸を見据えながら、静香はスタンドアップ・パドルボード、通称SUPでゆっくり進んでいた。

ビーチに面したハレイワ・ハーバーを出発したときは水面の揺れに敏感となり、スタンドアップ・パドルボードという呼称を無視して膝立ちしていても不安定極まりなく、今すぐにでも引き返したくなった。

両脇を、まだ10才にもなっていないだろう地元の子供たちがすいすいとSUPで往来していく。静香はやるせない気持ちになった。

しかしアナフル川に入って橋をくぐった辺りまで来ると、水面はだいぶ穏やかになり、静香でも立って漕ぐことができた。女性インストラクターの早口の英語にもやっと慣れてくる。

『ハワイには、ひとりで来たの?』

何の悪気もなくインストラクターは尋ねてくる。

『ひとりで来ました』

『そう、素敵ね!ひとり旅って楽しいわよね!』

ハワイの人たちは、何を言っても否定しない。

『見て!あの子は、ウチの娘の友達よ!』

少し離れたところをSUPで進んでいた少女を見つけ、インストラクターは言った。

『ハーイ、スージー』

スージーと呼ばれた少女は、SUPの上から笑顔で手を振り返す。

『ほら、シズカもハローって言ってみて』

静香は、川にボトンと落ちることを覚悟で、懸命に手を振って「ハロー!」と呼びかけた。

スージーは、持っていたパドルを隣でSUPしている男の子に渡し、両手を使って大きく手を振ってくれた。

『あの彼は、スージーのボーイフレンドなの』

まだ10才にもなっていない少女に、まだ10才にもなっていないボーイフレンドがいる。一方、自分は、ひとりでハレイワまでレンタカーで来て、ひとりでSUPを習って…。

どれだけ良い景色で、心地よいアクティビティをしていても、思い出すのはいつも隣にいた勇作のことだった。

【14日間の恋人】の記事一覧

もどる
すすむ

おすすめ記事

もどる
すすむ

東京カレンダーショッピング

もどる
すすむ

ロングヒット記事

もどる
すすむ
Appstore logo Googleplay logo