元カレ・コレクション Vol.10

「デート中にまたそういうことするの?」交際してすぐに、女が不信感を抱いた男の行動

ー電話の後の俊介さん、完全に仕事モードだったな。

その帰り道、杏里は電車に揺られながら、ぼんやりと考えていた。

俊介は、店の最寄りの駅まで送ってくれたが、車中でも考え事をしている風だった。帰り際も、また連絡するねとかそういった言葉は一切なかった。

ー告白のこと、このまま無かったことになったりして…。

今日のデートの一連の流れを思い返して、不安に駆られた。本当に急で大変な仕事だということはわかるが、少し寂しさを感じてしまったのだ。

ーそれにしても俊介さん、あの後大丈夫だったのかな?

詳しいことは直接聞かなかったが、俊介は切迫した雰囲気だった。その後、無事に問題は解決したのかどうかが純粋に心配になる。

『Anri:今日はありがとうございました。お仕事、大丈夫でしたか?』

杏里は何度も文面を考えたあと、一言シンプルなメッセージを送ったのだった。




「ああ、疲れた…。金曜だしそろそろ帰ろうかな…」

それから、約1週間が過ぎた。残業を切り上げた杏里は、スマホを手に取り、画面をじっと見つめる。

あの日俊介に送ったメッセージは、既読になったものの返信が来ない。

ーなんなの、この状況。ああ、こういうときは、誰かに話を聞いてもらいたい…。

誰か友達に相談して、モヤモヤした気持ちを吐き出したい衝動に駆られる。今までだって、恋愛で何かが起こるといつもそうしてきたのだ。

俊介を紹介してくれた莉奈に連絡してみようか。それとも他に誰かいただろうか…。連絡先をスクロールしながら、ふと手を止めた。

ーそうだ。もうこんなことも、やめようと決めたんだった。

恋愛で一喜一憂し、衝動的に誰かに連絡して愚痴を漏らし、良かったことなんて一度もなかった。

自分の不安を吐き出してスッキリすることはできても、周囲の人々を振り回した挙句、他人の意見に流されて余計に混乱する始末だ。

でも何より、これは杏里と俊介の間のことなのであって、どうすべきかは杏里が決めることだ。杏里の話を聞かされる側の人たちの気持ちも考えたことがなかった。

「はあ、大人になろう…」

そう呟いて、帰り支度をしてオフィスを出る。

すると、その時だった。1通のLINEが届いたのだ。

『Shunsuke Tokura:返信、遅れてしまってごめん。今から会えないかな?』

時計を見ると20時、当日のお誘い。正直に言えば、誘われたことは嬉しい。

ーだけど…。

金曜日の夜だというのに、こちらが暇をしていることが前提のような急な誘いである。杏里は一瞬、気付かないフリをしようかと思った。

ーでも、そんな駆け引きも無駄かな…。

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