女神のオキテ Vol.4

可愛くてとびきり優しい、年齢不詳の女。だけど不意に彼女が見せた本当の顔とは

女子高、ママ友社会、看護師やCAなどの女性が多い職場。「女の世界」となると、多くの人はあるイメージを抱く。

—女の敵は女。

この物語は、化粧品メーカーに勤務する主人公が奮闘するストーリーを通じて、「女社会の実情」を描いたものである。

ここは、女たちがスペックを振りかざす孤軍奮闘のマウンティング社会でしかないのか?それとも…。

◆これまでのあらすじ

大手化粧品メーカーの営業部門から、美しく華麗な女たちが集う開発部門へと異動となった彩乃。

桜子をはじめとし、強烈な女達に毎日戸惑うばかり。そして、またしても新たな波乱の予感だが…。


街ゆく人々の服装がだんだん軽やかになっていく、6月初旬。

彩乃はオフィスで、目の前に立つ一人の女性に目を奪われていた。

彼女の名前は、鈴木舞姫(まき)。彩乃のOJT担当・桜子よりも上のポジションに立つ、つまり上司である。おそらく年齢も、桜子よりだいぶ上のはずだ。

だが桜子の上司と言われても、ぱっと見は全然わからない。

―桜子さんも美しいけれど、舞姫さんに関しては年齢不詳の域だわ…。

大きな瞳、バランスよく配置されたパーツの整った顔。華奢でスタイルも良く、舞姫はとにかく「可愛い」のである。

今日は、彩乃と桜子、そして上司の鈴木舞姫というメンバーで、打ち合わせを行っている。

いつもは11時にフレックス出社する桜子も、珍しく定時に出社していた。試作中のアイシャドウについて、舞姫に中間報告を行なうためだ。

彩乃は、桜子と舞姫の会話に必死でついていこうとする。だが、ところどころ理解できないことがあって、メモをとるので精一杯だ。

すると、彩乃の必死な様子に気づいたのか、舞姫がにっこりと微笑んだ。

「日比さんは初めてのことだから、わからないことも多いでしょう。遠慮なく聞いてね」

「はい…すみません」

頭を下げる彩乃に、舞姫はアイシャドウの色味を1つずつ確認しながら、丁寧に説明してくれる。

「これは、もう少し赤みを増やしたほうがいいわ。それからこれは、パールの量を抑えたほうがいいわね」

打ち合わせを終えると、舞姫は自分のデスクへと戻っていった。ふう、と軽いため息をつく桜子に、彩乃は明るい声で言った。

「舞姫さんって、本当に優しい方ですね!しかも上司にこんなこと言ったら失礼かもしれませんが、とても可愛い方ですよね…。憧れちゃいます。あんな素敵な方と仕事できるなんて、嬉しいなあ…」

ところが、桜子の返答は意外なものであった。ちらりと視線をよこすと、驚くほど冷めた調子でこう言ったのである。

「“素敵な上司”か…。実際にそうだったらいいんだけどね」

それだけ言い残して立ち去っていく桜子の背中を、彩乃はわけがわからず見つめていた。

【女神のオキテ】の記事一覧

もどる
すすむ

おすすめ記事

もどる
すすむ

東京カレンダーショッピング

もどる
すすむ

ロングヒット記事

もどる
すすむ
Appstore logo Googleplay logo