嘘 Vol.1

嘘:「恋愛の傷は、他の男で癒す…」26歳・恋愛ジプシー女のリアル

「どうしてあの人は、私のことを好きになってくれないの?」

恋愛の需要と供給ほど、バランスが崩れているものはないかもしれない。

好きなあの人には振り向いてもらえず、好きでもない人からアプローチされる。

そして、満たされぬ思いを誤魔化すために、人は自分に嘘をつく。

嘘で自分の感情を誤魔化した先に待っているのは、破滅か、それとも…?

満たされぬ女と男の、4話完結のショートストーリー集。1話~4話は、ー片想いー


「紗英、お待たせ」

金曜23時の南青山。『バーブーツ』の店内に、健二の低い声が響く。自分で呼び出しておきながら、その声にハッとしたと同時に、新着のないLINE画面を茫然と眺めていたことに気づかされた。

「もう、遅いよ~。待ちくたびれた~」

私がおもむろにバーカウンターに座った健二の腕に触れると、彼は明らかに嬉しそうな顔をした。

その姿は、私をどことなく安心させる。

モテるであろう男が夜中に自分に会いにきてくれたという事実が、自尊心を満たす。

「いや、これでも早いほうだろ」

取り繕うように早口になった健二は、ウイスキーのソーダ割りを頼むと、勢いよくグッと飲み干した。優に180cmを超えるガタイに、一気にアルコールが吸引されていく。

彼は、私が呼び出すといつも必ず来てくれる。

ちょっと前までは、「ちょうど近くで飲んでた」なんて見え透いた嘘をついて駆けつけてくれた健二だったが、最近はそんな言い訳もしなくなった。

外資系IT企業の営業マンをしている彼は、普段はスーツ姿のはずだが、今日は、足元はスニーカーというラフなスタイルだ。

ということは、帰宅したあとにも関わらず、わざわざ会いにきてくれたのだろう。

健二は2杯目のソーダ割りを半分ほど飲み終えた頃、私の触れてほしくない話題に切り込んできた。

「またか?」

私が「何の話?」なんて言ってはぐらかしても、逃がしてはくれない。

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