妻が起業したら、離婚の危機に直面! 35歳・サラリーマン夫の本音

手料理ってコスパ悪いよね


また、事業の拡大は、萌の生活スタイルだけではなく、価値観そのものを変えていったようだ。

健吾の話によると、以前は忙しい中でも積極的に作ってくれていた手料理も、最近はいつ最後に食べたか思い出せないのだという。

「単純に仕事が益々忙しくなり時間がないというのが理由なのだと思いますが、休みの日のブランチも当然のごとく『外に食べに行こう』と言うようになりました。また、以前は『手料理ってやっぱり美味しいよね』なんて言っていたのに、この間は『手料理ってコスパ悪いよね。外で食べた方が効率的』と言っていた。特に反論はしませんでしたが、ああ、変わっちゃったなぁと感じたのは事実です」

萌の変化は「手料理はコスパ悪い」発言だけではなかった。

有名モデルが彼女のブランドのお洋服を気に入り、私服でも着てくれるようになったことをきっかけに、萌の交友関係はみるみる華やかになっていったらしい。

健吾には未知の世界だが、何やら派手なパーティーに誘われ外出したり、そのためにドレスやジュエリーを新調したりもしていた。

もちろん、社交だって仕事のうちであることは理解している。高そうなドレスやジュエリーを購入することも、彼女が稼いだお金をどう使おうが自由だと思っている。しかし...。

「そうやって着飾り、頻繁に出歩く妻は以前とは別人に見えました。本当に自分の奥さんなのだろうか?と疑問に思うくらい」

さらに健吾は最近、萌の別の発言にも引っかかるものを感じていると話を続けた。

「アパレルの仕事が楽しくて仕方ないのはわかるのですが、やたらとメガバンク時代のことを悪く言うんです。例えば…あんなつまらない仕事やめて正解だった、とか。悪気はないのかもしれませんが、僕はそのつまらない仕事を今も続けているわけで。何度も言われるとさすがにカチンときて『萌は好きなことで稼げていいよな』とかって嫌味を返してしまいました…」

健吾は「僕も大人気ないですが」と付け加え、バツが悪そうに笑う。

しかしその笑い声は潤いを欠いており、どうにもやるせなく響いた。

…夫婦は合わせ鏡である。

夫だけが変わったわけでも、妻だけが変わったわけでもない。どちらが先も後もない。

お互いがそれぞれに、少しずつ変わってしまった。それが、真実なのかもしれない。


▶NEXT:1月4日 土曜更新予定
“良妻”の呪縛に縛られた女が陥った、結婚3年目の危機とは

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