人との、別れ―。
それは、誰しも一度は経験したことがあるもの。
胸が張り裂けそうになるよう辛い別れもあったはず。
けれど、別れた後に待っているのは辛いことだけじゃない。きっと、眩しいほどの明るく晴れやかな人生が待っている。
これは、そんな「別れ」にまつわるオムニバス・ストーリー。
「三浦さん!ちょっとこっち来てください!トラブルが……」
「稟議書できたんですけど、見てもらえませんか」
「明日のweb会議の資料のフィードバックください」
出社した途端、三浦結衣のデスクの周りには多くの人が詰め掛けてくる。何かしらのトラブルを抱えて。
そんな積み上げられた「やらなければいけないこと」を、結衣は一つずつスピーディーにかつ確実に対応していく。その仕事っぷりには、後輩女子社員はもちろんのこと、男性の先輩社員も一目を置いていた。
結衣が勤めているのは、ウェブ系の広告代理店。10年前新卒で入社して以来、第一線で活躍している。
そんな結衣も今年で32歳を迎えた。
入社当時から仕事一筋で、前向きに真面目に努力した結果、営業成績はトップだ。部下の人数は20人を超え、日々忙しく過ごすいわゆるバリキャリ女子。
そんな誰もが憧れるキャリアを持つ結衣の悩みといえば、恋愛だ。
4年前に恋人と別れて以来、恋愛とは無縁の日々を送っていた。「恋の予感」なんていう甘い響きの現象は、気配さえも見せてくれない。
―今は仕事を頑張りたいから、35歳までには結婚をして、子どもを産んで幸せな家庭を作る―
という結衣の目標まで残すところあと3年となっていた。
「そろそろこの目標も諦めないとな……」
「え!結衣さん何を諦めるんですか?そんなこと言わないで、今月も目標達成しましょうよ!」
小さく嘆いた結衣の発言を、いつの間にかそばに来ていた後輩アシスタントの木村夕里子が聞いていた。
「仕事のことじゃないよ。結婚とか子どもとかね、その辺のこと」
結衣はそう言いながら、冷めかけたコーヒーに口をつけた。
「わぁ、意外です。結衣さん恋愛とか興味ないのかと思ってました」
「恋愛したいなとはずっと思っているんだけどね。なかなかね……それより何か用があったんじゃないの?」
このままでは長年付き合っている彼がいる夕里子(夕里子曰く結婚目前だという)の話に花が咲きそうだったため、話をそらした。
この記事へのコメント
お子ちゃまの考えることはわかんないわ。
告白も別れ話も直球ですね。理由が気になります。