【大ヒット御礼】煮沸 第二章 Vol.4

敵と味方から仕組まれた罠。全ての希望が潰えた時、起きてはならない人格が目覚める。

第二章 1話~3話はこちらから
第一章 全5話はこちらから

【第二章 これまでのあらすじ】


多重人格の連続殺人犯として収監された橋上恵一。

心身喪失での減刑が予想される中、現場捜査官の工藤は、昔の回復期にあった ”まともな頃の恵一の犯罪” を追いかけ、殺人の痕跡を発見。

しかし、工藤が恵一にそれを詰問すると、「当時から多重人格の症状は治っておらず、保護者である叔父・和明がその人格を操り、犯罪に加担させていた」という独白を受ける。
…つまり、まともな精神状態ではなかったと。

一方、絶対に極刑に持ち込みたい警察上層部の黒岩は、精神鑑定医の井口に『恵一に刑事責任能力あり』の鑑定を出すよう脅迫。井口も応えてしまう。

捜査を進める工藤を尻目に、恵一の極刑包囲網は、確実に狭まっていくが…


◆国道

ーキキィッ!

車が停まり、一瞬の静寂の後にドアが開く。


車から降りてきた男の低い声が響く。


「恵一!」

恵一が元来た方向に振り返り、走ろうとする。

和明が優しく恵一の背中に問いかける。

「なぁ、こんな夜中にどこに行くんだよ?真奈美と一緒にいたんだろ?真奈美が見つからないと、おじさん困っちゃうんだよ」

背後から、和明の足音が近づく。
恵一の目に再び涙が浮かぶ。


電灯が、蛾と和明の笑顔を照らしている。

「…どうして」
恵一の声が震える。

「どうしておばさんを殺したんだよ!あんなに優しかったのに!」

「…何言ってるんだよ?殺したのは恵一だろ?おじさん…ショックだよ」

恵一が和明の方に振り向く。
「お前が僕を使ってやったんじゃないか!」

「…恵一。可哀そうに、動転して。さ、一緒に警察に行って、おばさんのところに案内しなさい。それで、ちゃんと罪を償…」
「どうしてやった!どうして!」

「…しつこいなぁ」

「どうして!」


和明から笑顔が消える。
「なぁ恵一。いいかい?大人の世界にはね、子供にはわからない色んな”仕組み”があるんだよ」
「なにさ、仕組みって!」


「…人ってね、予想外に死んじゃうと、お金が入ってくるんだ。”残された家族が困りませんように”って」



「…お金?」




.




「…見つからないよ」

「ん?」

「絶対に見つからない方法でおばさんを埋めた」

「なんで見つからないってわかる?」



恵一が和明に近づいて言う。



「…昔、お母さんが僕に教えてくれた。よく覚えてる」

「お母さんが何を埋めたんだ?」

「…僕だ」


和明の顔が歪む。



「…”ウチゲバ”って言うんだ。まだ見つかってない人もたくさんいるってお母さん言ってた。いいのか?僕を殺したら絶対におばさんは見つからないぞ」

「だったらお前が案内しろ!」
和明が憎悪に満ちた目で恵一に掴みかかる。

ーバッ!

「殺すぞ」
恵一が背中から園芸用のナイフを取り出す。


「…クソガキが、ふざけやがって」

恵一が構える。

「僕を殺せば、おばさんは見つからない。お前になんの得もないただの殺人だ。でも僕を生かしておけば、絶対にお前を殺してやる。…どうする?」.....

煮二章

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