【大ヒット御礼】煮沸 第二章 Vol.3

記憶無き罪。愛する存在を自ら葬り、少年は羽化する。

※衝撃の第1話、第2話はこちらから

【第二章 これまでのあらすじ】

多重人格をもつ連続殺人犯として収監された橋上恵一。

心身喪失での減刑が予想される中、事情により死罪に持ち込みたい捜査本部は、「姥捨て案件専門家」と呼ばれる工藤を捜査責任者に任命する。

ー ”まともだった頃の恵一”の罪で裁くしかない。

2010年に、死罪の時効は撤廃された。
工藤は、恵一が人生で唯一、穏やかな時間を過ごした中学時代を追う中で、恵一の異常を示す数々の事実を発見する。

その時、工藤の電話が鳴る。

「橋上恵一がお前に会いたいと言っている…」

第一章(全5話)はこちらから



◆裏山

…ジジッ ジジジジジジッ ジジジッ

蟲の音がする。

少年の瞳に、涙が溢れる。


足元に、躰が横たわっている。

冷たい汗が背中をつたう。


真っ白な膝を見て少年は思う。

ー 昔、テレビの上にあったお正月の鏡餅みたいだ。

「恵一、すこし傷んできてるな」
お父さんがすぐに割って焼いてくれた。


恵一は覗きこむように顔を寄せる。

傷んできてる。すぐに割って、焼かなきゃ。


◆病院


等間隔で壁にへばりついた警護官が見守る病院の廊下を、工藤が進む。


橋上恵一の部屋の前で座る男に、静寂とは不釣り合いな大声で言う。

「外せ。上に話はしてある」
「しかし・・・」

「職務命令違反になるぞ!名前は?」

警護官がゆっくりと席を立つ。


躊躇わずに、工藤が扉を開ける。

…バタン

扉を閉めると、部屋が真っ暗な闇に包まれる。

工藤はその場から動かずに、目が慣れるのを待つ。


部屋は、住民の空気を纏う。
工藤はそこに誰がいるかを感じ取ろうとする。

ーどの人格だ?

ここにいるのは・・・


.


ー 期待したやつではないな。

工藤が微かにほほ笑む。

「工藤だ。話を聞きにきた」.....

煮二章

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