「どうせ私なんて…」
そんな言葉が口癖の、美優(みゆ)28歳。
恋愛がうまくいかずネガティブ志向まっしぐらな美優の前に現れたのは、「俺ってツイてるんだよね」が口癖の、超ポジティブ男だった。
相反する二人が、恋に落ちたら…?
◆前回までのあらすじ
美優は、新たに出会った男・浩輝に惹かれながらも、彼の美人な女友達に会ってしまい、自信喪失。浩輝との関係を進めることに躊躇するのだった。
「美優ちゃん、今週末空いてない?美味しい焼き肉があってさ、一緒に行こうよ!」
スマホ越しの浩輝の声は、相変わらず今日も明るい。
美優が、二度目のデートを断ってからも、浩輝はめげずに美優を誘い出そうとしてくれる。普通だったらウザい男だと即ブロックするところだが、彼に対してはそんな気持ちは一切わかない。
むしろ、浩輝に対して好意をもっているというのは、美優自身もわかっている。そんな相手からのお誘いなのだから、喜んで返事をすればいいはずなのに、口から出た言葉は、心とは裏腹なものだった。
「予定があって、難しいかな…。」
こんなそっけない返事しかできない自分のことを、美優は心底情けなく思う。
浩輝との初デートは、本当に楽しかった。ここ数年、セカンド扱いをされる恋愛ばかりしていた美優にとっては、久しぶりに心から笑える一日だった。
しかし、二人で宝くじ売り場に並んでいる最中に偶然会った美女・セリナのことが、どうしても気になって仕方がない。
インスタグラマーとして人気の彼女を、浩輝はスポーツジム友達だと紹介してくれた。でも、セリナのインスタに浩輝が頻出しているのを見てしまったのだ。
「美優ちゃん、週末がダメなら平日の夜はどう?俺、どこでも何時でもいくよ!」
「…浩輝くん、私なんかに構ってくれなくていいよ。どうせ他にも予定一杯あるんじゃないの?」
―しまった。
そう思ったときには、既に手遅れだった。今まで明るく話し続けていた浩輝が、ぐっと言葉を詰まらせたのがわかる。
「ごめん、俺迷惑だよな。…空気読めてなかった。」
また出直すわ、と浩輝が言って電話が切れた途端、美優は後悔のあまり、ベッドに倒れ込んだ。