―私の、バカバカバカバカ…!可愛くなさすぎ。ていうかイヤな女すぎ!もう、最悪…。
美優は、謝罪のメッセージをスマホに何度も打ち込むが、怖くてなかなか送信することができない。
ようやく送った「ごめんなさい」の一言はなかなか既読にならず、深い負のループに陥るのだった。
ネガティブ女の、心の変化
週末、美優は部屋で一人寂しく過ごしていた。
浩輝からのお誘いを断るときに、とっさに用事があると口にしたが、そんなのは真っ赤な嘘である。
実際は何の予定もなく、年末の貴重な休日を、自宅にこもって消費しているのだから、気分が落ち込むのも当然と言えば当然だ。
ワイドショーでは、街角インタビューをやっている。クリスマスやお正月など、友人や恋人、家族と過ごす楽しい予定のために、人々は忙しそうに、そして楽しそうに週末を過ごしているようだ。
―私は一人で、何やってんだろ…。
浩輝へ送った謝罪のメッセージは、まだ既読にすらなっていない。既に他のやり取りに隠れて下の方に追いやられているかもしれないと思うと、更に気持ちが沈んでいく。
暗い気持ちのまま、パソコンを開いてネットサーフィンをしていた美優の目に、ある記事が留まった。そこには、浩輝と一緒に列に並んだ、宝くじについて書かれていた。
「あれ?宝くじって、WEBで買えるんだ。」
リンク先の宝くじのサイトには、初めてネットで購入する人向けの説明がある。普段利用しているネットショッピングと同じように、とても簡単に購入できそうだ。
「ふーん、購入から当せん金の受け取りまで、全部ネットでできるのね。…便利な世の中になったものだわ。」
思えば、今までの人生で宝くじを買ったことはなかった。いつも街なかで宝くじ売り場に並んでいる人たちを眺めてはいたけれど、なかなか自分が買うきっかけは、なかったのだ。
―あのとき、初めて浩輝くんと並んだけど、自らチャンスを棒に振っちゃったし。
浩輝が宝くじを購入した後に美優も買おうと思っていたのだが、ちょうどセリナが声をかけてきたため、タイミングを逃してしまったのだ。
美優は、寂しい気持ちにフタをするようにパソコンをパタリと閉じた。
だが、頭に浮かぶのは浩輝のことばかり。当せんしたら何をしようか、そう浩輝と盛り上がったことを思い出していると、自分の口元が緩んでいることに気が付いた。その事実に、自分が浩輝に魅かれていることを改めて自覚させられる。
―俺、ツイてるんだ!だから一緒に居る美優ちゃんも大丈夫!―
並んでいる間、買おうかどうしようかと迷っている美優の背中を押してくれた浩輝の言葉が、何度も美優の頭をよぎる。
―自分から行動しなきゃ、何も始まらないもんね。…ちょっと買ってみようかな。
美優はスマホを手に取り、もう一度宝くじのサイトに行くと購入画面に進んだ。すると、まるで服や本を買うのと同じくらい、簡単に購入できたのだった。
その後で、ひとつ大きな深呼吸をして、一向に既読にならない浩輝に、再びメッセージを送ろうと決めた。