美優は、宝くじを買ったという報告をきっかけに、もう一度ちゃんと謝りたい一心だった。無視されたらと思うと怖くて仕方ないけれど、今行動しないと、もう一歩も進めない気がする。
浩輝のことを思い出す度に幸せになる自分の心に、もう嘘をつきたくないと思ったのだ。
“この間は、ごめんなさい。ネットで宝くじ買ってみたよ。当たったら、御馳走させてください。”
ドキドキしながら送信ボタンを押すと、数秒で既読になる。そして、すぐさま返事が届いた。
“宝くじがネットで買えるなんて、知らなかった。いい情報を教えてもらったお礼に、ご馳走させてください!今夜のご予定は?”
かわいいスタンプが添えられたそのメッセージを見て、美優は「はぁー、良かった」と安堵のため息をもらした。
◆
浩輝が待ち合わせ場所に指定したのは、初デートでも誘われた人気のイタリアンだった。
ダメモトで電話をしたところ、急遽キャンセルがでた直後で予約が取れたらしい。本当にツイてるねと驚く美優を見て、浩輝は嬉しそうだ。
「絶対にこの店に美優ちゃんと来たかったから。…なかなか連絡できてなくて、本当ごめん。」
席に着いたとたんに頭を下げる浩輝に、慌てて美優も声を上げる。
「私こそ、ごめんなさい。本当は、すごく嬉しかったの。でも人気者の浩輝くんに、私なんて釣り合わないんじゃないかって疑っちゃって。もしかしたら遊ばれてるのかもって、勝手に不安になっちゃって…」
驚いたように話を聞いていた浩輝は、「ごめん!」と両手を合わせた。
「俺、美優ちゃんとデートできるのが嬉しくて、大はしゃぎしてた。不安な気持ちも考えずに、ごめん。
あの電話のあと、嫌われたかと思ってLINE見るのが怖くてさ、ずっと見ないようにしてた。だから、返事もなかなかできなかったんだ。でも、そろそろ覚悟を決めなきゃって思った瞬間に美優ちゃんからメッセ―ジが来たから、驚いたし、嬉しかった。
会ったばっかりでこんなこと言うと、また信じられないかもしれないけど…俺、美優ちゃんのこと、すっごく好きだよ。」
浩輝は、少し恥ずかしそうに笑った。
照れながら美優を見つめる浩輝の優しい目は、美優をセカンド扱いした元カレとも、元々カレとも、全然違う。
―私、浩輝くんのことなら、信じられる。
「私も、すっごく好き。」
素直な気持ちを告げた美優の頬は、紅く染まる。恥ずかしさのあまり、運ばれて来たばかりのパスタを口に運ぶと、浩輝の言う通り、とても美味しかった。
「俺、いい事思いついた!宝くじが当たったら、二人で本場のパスタ食べに行こう。そのまま世界中をさ、手を繋いでゆっくり旅するの、どう?」
目を輝かせる浩輝の夢を、美優も頭の中で描く。想像しているだけでもワクワクしてくる。
「楽しそう!じゃあ、私のが当たったら私が出すね!」
―浩輝に出会えた私は、とってもツイている。
この調子なら、本当に宝くじだって当たるかもしれないと、美優は心からそう思った。
Fin
浩輝と美優が買った宝くじの詳細はこちら!
衣装協力:P1.男性 チェックジャケット¥64,000(T ジャケット/03-3470-8232 )、水色シャツ¥28,000(フランク&アイリーン/ サザビーリーグ 03-5412-1937)女性 ウエストシャーリングレースワンピース ¥20,00(LADYMADE / 03-6433-5785) P2.アシメフロントブラウス ¥9,000(LADYMADE / 03-6433-5785)P3.男性 ネイビーパンツ¥26,000(T ジャケット /03-3470-8232)女性 フレアロングコート ¥42,000(LADYMADE / 03-6433-5785)
撮影協力:株式会社コスモスイニシア