女には少なからず人生に一度、“大人の男”に恋する瞬間がある。
特に20代前半、社会人になりたての頃。
ヒヨコが生まれて初めて見たものを親だと思うように、先輩や上司に恋焦がれ、社内恋愛にハマる女性は多い。
だが場合によっては、その先にはとんでもない闇が待っている場合も…なくはないのだ。
都内の人材派遣会社に内定した咲希(22)もその内の一人。
彼女は、学生時代の清く甘い時間から、少しずつ、でも確実に大人の世界の苦味を知っていく……。
「オトナな男」一挙に全話おさらい!
第1話:彼氏とのLINEは、スタンプ1つで終わり…。23歳女が渋谷・宇田川町で気づく恋の終焉
―私って…もしかして遊ばれていただけ…?
真っ赤に泣き腫らした目で、咲希は呆然と鏡の前に立ち尽くす。
咲希はふと、まだ希望で満ち溢れていた、入社してすぐの頃のことを思い出した。
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第2話:「もう帰りたい…」自慢話ばかりする男からのデートの誘いに、女が乗った理由とは
悠からの連絡の頻度が極端に減ったのは、ここ数週間のことだった。咲希のメッセージに対して、意味のあるようで無いスタンプだけが返ってきている。悠から送られてくるクマのスタンプは楽しげで、咲希のあせる気持ちなんて知る由もない。
考えるのはやめよう、そう思いスマホをポケットにしまう。
電車はいつの間にか地下を抜け、二子玉川の上を走っていた。真っ黒な川を窓越しに眺めていると、急に眠気がやってきた。意識がふんわりしてきた頃、ポケットでスマホが震えた。
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第3話:「私、彼氏がいるのに…」女を虜にする男が、デートの帰り際に発した一言とは
海斗との食事から一夜明け、相変わらず通知のならないスマホを握りしめる咲希を乗せた電車は、二子玉川駅に停車していた。二子玉川駅からは大井町線の乗客も増えるため、咲希は憂鬱な気持ちになる。
―ドアが閉まります
電車のドアが閉まる瞬間に、多くの人が駆け込んできた。咲希はうんざりしながら、閉まる扉に詰め込まれてくる人の圧力に耐える。
俯いていては呼吸が苦しくなるため、咲希はふと顔をあげた。その瞬間、心臓が半分くらいの大きさに縮まり、直後に一気に破裂する。圭太が、乗ってきたのだ。
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第4話:付き合っていない男の部屋に誘われて、思わず・・・。「好き」とは言わない男の誘惑に負けた女
金曜日の夜、待ち合わせ5分前に圭太がやって来た。
「あ、いえ、私が早く着きすぎたので」
「今日も可愛いね、行こっか」
暑くなってきたねと言いながらワイシャツの胸元をパタパタさせる圭太の仕草に、また思わず目を逸らしてしまった。
スーツのジャケットを手に持ちながら歩く姿を一歩後ろから眺める。自分よりもひと回りも大きい背中に、肘まで捲られた袖から覗く男性らしい腕に、心がざわついていた。
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第5話:「彼氏と、別れちゃえばいいのに・・・」男の甘い誘いに乗った女への、酷い仕打ちとは
ふと目を開けると、見たことのない天井に一瞬、自分の居場所がわからなくなっていた。いつの間にか眠りに落ちていたようだ。
あれからどうやってソファから移動したのか、ベッドで何があったのかー。思い出そうとすればするほど、身体中の血が逆流するような感覚になる。
頭の下に腕の感覚を感じ、我に返ったように圭太の方を見た。
「あ、起きた。おはよう」
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第6話:「実は、付き合ってる人がいるの・・・」自分を好きだと言っていたはずの男の本性とは
―悠、うちらもう別れよ。
勢いに任せて悠に別れを告げた咲希だったが、一人暮らしの部屋に帰った瞬間、寂しさが渦を巻いて襲ってきた。身体に残っている微かな圭太の香りだけが咲希を少しばかり癒す。
ベッドに入ってもなかなか眠ることができず、気づけば圭太にメッセージを送っていた。
「明日の朝、お家に遊びに行っても良いですか?」
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第7話:「やっぱり、私は2番目の女?」男の狡い思惑に、ハマってしまう女
―実はね、企画部の吉沢圭太くんと付き合ってるんだ。内緒だよ。
梨江子と圭太が実は付き合っていると聞いたランチから1週間が経過した。圭太に好きと言われ、もうすぐ付き合うことができると思っていた咲希は、やり場のない気持ちに困惑していた。
しかし夏休み前で仕事も一気に忙しくなったタイミングと重なったこともあり、圭太や梨江子のことを考えている余裕がなくなっていた。
そんなある金曜日の午前中、咲希の元へクライアントからクレームの電話がかかってきた。
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第8話:「誰と浮気してるの・・・?」彼氏のスマホ盗み見た女が知ってしまった、悲し過ぎる真実
圭太には梨江子という彼女がいる。
それは揺るぎない事実なのだが、圭太と話していると、その瞬間だけは圭太にとって世界に一人だけの存在になれるような気がした。
もしかしたら、圭太は昨日梨江子と別れたのではないかー。
そんな甘い妄想は、手を繋ぐ素振りも見せない圭太にかき消された。圭太の存在は咲希の気持ちを明るくする反面、心をぐしゃりとさせるのだった。
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第9話:「全部知ってるから、もういいよ」彼女と浮気相手を遭遇させた、男の末路とは
「東京に戻ったら、圭太さんと別れる」
そう啖呵を切ったのは良いものの、咲希はどこか暗い気持ちを抱えていた。夏休み最終日、新大阪のホームで新幹線を待っていた。
3月末、悠といた場所だった。
―もし、悠と別れていなければどうなっていたのだろう
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