彼の好きなタイプって…
「優香。私、もうダメかも…」
土曜のランチタイム。女性客やカップルで賑わう代官山のカフェで、愛理は体中から吐き出すようなため息をついた。
「どうしたのよ。自信だけが取り柄の愛理なのに」
プレートにたっぷり盛られたサラダを頬張りながら、愛理をからかう優香。誰に媚びることもない、さっぱりとした反応が実に彼女らしい。
そんな優香は今日、オフだからと言って、ほぼノーメイクの状態で登場した。
透き通るような美肌、血色の良い頬と唇が健康的で、むしろすっぴんの方が綺麗なんじゃないかと思うほどだ。
「湊さんとのデート、微妙だったの…?」
愛理がつい見惚れて黙り込んでしまうと、優香が再び心配そうな表情で尋ねた。
「微妙っていうか…とにかく全然、手応えがなくて。多分、私に何の興味もないんだと思う」
言いながら意気消沈したのか、どんどん声が小さくなる愛理を見て、優香は「うーん」と宙を見上げる。
そして「百戦錬磨の愛理に私が色恋を語るのもおかしいけど」と前置きをしてから、こんなアドバイスをするのだった。
「愛理はさ、気合が入りすぎてるのかもよ?愛理の本当の良さが伝わってないんじゃない?ほら、いま私に見せてるような、そのままの自然な愛理を、湊さんにも見せればいいのよ」
−そのままの、私…?
そんな風に言われても、愛理にはいまいちピンとこない。
愛理にとって、男性の前で着飾ること、モテ女の振る舞いをすることは、もはや染み付いた癖のようなものなのだ。