―俺も賢治さんを見習って、もう少し体のこと、気を付けるかな…。
オフィスに戻った洋介が『賢者の食卓』をネットで検索していると、香織がコーヒーを持ってきてこう言った。
「ネットでも注文できるみたいですね」
洋介がいま何をしているか、香織はいつ何時でも察することができるようで驚く。そして少し悪戯っぽく笑いながらこう付け加える。
「社長が格好良くなるの、楽しみにしてますね」
◆
こんなにそばにいたのに・・・
そして、しばらく経ったある日のこと。終業時間ぴったりになると、香織は早々に帰り支度を始めた。
「お疲れさまです!」
急いでオフィスを出ようとしている香織の姿に、洋介はピンときた。女性らしい綺麗なラインのワンピースに、控えめなアクセサリー。きっと、デートなのだろう。
その予想は当たったようで、珍しく早めに帰ることを同僚に「デート?」と突っ込まれると、香織ははにかんだように頷いている。
そんな様子を見ていると、洋介の胸がギュッと締め付けられた。彼女を他の男にとられるかもしれない、ということが現実味を帯びてくると、いてもたってもいられない気分になる。
―香織と2人で仕事の延長ではなく、プライベートでゆっくり話がしたい…。
これまでの洋介なら、離婚経験を引きずり、自分の気持ちに気付かないフリをして、香織を改めて誘ってみようなんてことは思いもしなかっただろう。
だがトレーニングと『賢者の食卓』を続けてきた結果、身体も随分引き締まり、自信がつき始めていたのだった。
◆
「今夜軽く飲もうかと思うんだけど、一緒に行かないか?」
その週の金曜20時。オフィスに残って仕事をしていた香織に、洋介は声をかけた。
創業当時は2人で飲みに行くことも珍しくはなかったが、最近はそんな機会も久しくなかった。断られたらどうしようと、少しだけ不安になる。
「いいですね」
そう言っていつもと同じようににっこりと微笑みかけてくれる香織の様子に、洋介はホッと胸をなでおろす。
店に到着すると、二人はカウンター席に通された。オフィスの近くで夜遅くまでやっているこのバルには何度も足を運んでいるが、カウンター席に通されたのは初めてだった。
香織との距離感に、不覚にもドキッとする。そんな洋介の気持ちをよそに、彼女はメニューを見ながら言う。
「洋介さんは、白ワインですよね、辛口の。苦手な食べ物は…」
この10年間、ずっとそばにいてくれた香織は、誰よりも洋介のことを理解してくれている。
失敗して落ち込んでいる時にはとことん話を聞いてくれるし、時には厳しいことも言う。
自分にとって、香織は仕事仲間以上の、大事な存在だ。この気持ちに気づいた洋介は、どうやってアプローチしようかと考えていた。まずは、気がかりだった彼について話を振ってみる。
「医者の彼とはどうなってるの?」
「何度か会ってるんだけど…付き合うとは決めきれなくて…。いろいろ考えてしまいますよね」
香織は、ワイングラスを傾けながら少し憂鬱そうに答える。
そしてあんなにも思いを巡らせていた洋介だったが、その様子を見てぽろっと口から言葉が出ていた。
「……まぁ、そんなに急ぐことないんじゃないか?」
「え……?」
香織はその言葉に、どんな意味があるのかと問う顔をする。
この感情を、どう表現すればいいのだろうかー。
今日は金曜日。まだ時間はたっぷりある。香織と久しぶりに2人だけの時間を楽しもうと心に誓う洋介であった。
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