2019.11.22
女課長アリサ Vol.1
「恋も仕事も順調」なんてあり得るのだろうか?
必死に仕事に打ち込んでいたらプライベートは疎かになり、
かといって婚活に精を出していたら、キャリアを追い求めることは難しい。
今日も働く女子達は、仕事とプライベートの狭間で自分らしい生き方を模索している。
大手証券会社で働く、野村アリサ(32歳)は、問題児ばかりが集まる丸の内本店・営業8課の課長に任命される。
これは「女課長アリサ」が、仕事と恋愛に悪戦苦闘しながら成長していく物語である。
AM5時45分。大手証券会社で働く野村アリサの1日は、朝の経済番組“Newsモーニングサテライト”と共に始まる。
今日が晴れやかなものになるか、どんよりしたものになるかは、昨晩のニューヨークのマーケット次第だ。
―午前中のアポは10時に六本木か...。それまでに提案資料を準備して、その前にあのお客様に電話して...。
身支度をしながら、いつも無意識に今日一日の流れをシミュレーションしている。
髪の毛を綺麗に整え、慌ただしくコーヒーを流し込み、セオリーのジャケットに腕を通す。家を出る前には必ず全身ミラーの前に立ち、心の中で静かにつぶやく。
―よし。戦闘準備完了。
アリサは、中目黒の自宅からオフィスへと向かう。
9月の期末を控えたその日、午前中の顧客訪問から戻ると支店長室に呼ばれた。
「まさか?」と心臓が早鐘を打つ。
支店長室のドアをノックして、緊張しながらドアを開けた途端、支店長の野太い声がした。
「おつかれ!ノムちゃん!」
ーノムちゃんって、何度呼ばれても職場にそぐわないな・・・
違和感を覚えつつ、支店長の前に腰かける。50代半ばの彼は、バブル時代を未だに引きずっているという感じで、明らかに一昔前の人間だ。
「今回の人事異動だけど、ノムちゃんに丸の内本店の営業課長の辞令が出たよ。おめでとう!」
―とうとうこの日が来た!
これまで、週末だろうと夜だろうと数字の為であれば迷わず顧客のもとへ駆けつけ、プライベートよりも仕事を優先させてきた。
その苦労を思うと、目頭が熱くなった。
「あ、ありがとうございます・・・!」
「入社10年目で管理職だったら、同期の中でも早い方じゃないかな」
心の中でガッツポーズをして、喜びを噛み締めていたときに支店長が水を差す。
「あれ?ところでノムちゃん、今、何歳だっけ?」
ー入社10年目って知ってるんだから、30過ぎていることくらいわかるのに。わざわざ聞くかな...
「32です」
早くこの話を終わらせたくて、淡々と応えるアリサに対して、支店長が食いついてくる。
「もうそんないい年なんだ。バリバリ仕事もいいけれど、そろそろ結婚した方がいいんじゃないの?」
セクハラやパワハラ発言を気にする人が増えたこのご時世に、社内には昔と変わらずハラスメント発言をあえて積極的にするおじさんが一定数存在する。
彼らは、ハラスメントだとか気にせずに、言いたいことを言う自分をカッコイイと思っている。殊に証券会社には数多く生息しているのだ。
「そうですね。そのうちに」
完全に面白がってこちらを見ている支店長に、アリサは表情を変えることなく答える。
「ノムちゃんも美人だからって、のんびりしない方がいいぞ。男なんて女は若ければ若いほどいいんだからさ」
正直、イラっとした。
―私をからかって面白がっている。動揺した私の顔が見たいに違いない。
「...そうですね。そのうちに」
もう一度そう言って、アリサは眉ひとつ動かさずに部屋を出た。
ハラスメント発言なんて、今に始まったことじゃない。
それなのに、今日は妙に胸がチクリと痛んだ。
付き合っている(はずだった)彼氏ともう2ヶ月以上連絡をとっていないことを、思い出したからかもしれない。
今でこそ働き方改革で休め休めと言われますが、本当に時代が変わったなと思います。
私もありさの年の頃は毎日数字のことで頭がいっぱいで気の休まることはなかったですね。当時は詰めも厳しく数字が人格と言われた時代ですから。でもいい仲間とお客様に恵まれ、大変ながらも楽しく仕事に邁進してました。でもいい時ばかりではなく、リーマンショックの後は相場も悪く、上司もパワハラで...続きを見る毎日追い詰められていました。
今は50歳を前にして本当にいろんなことがあったし、本当に大変だったけど、喉元過ぎれば熱さを忘れるようなそんな感覚です。
今もまだ証券会社に勤務してますが、お客様のために後輩のために頑張っていこうと思う今日この頃です。
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