「仕事も恋愛も順調です!とか、一度でいいから言ってみたいわ…」
自席に戻ったアリサは、頭をくしゃっとかきむしりながら、誰にも聞こえない様な声で呟いた。
友達の紹介で半年前に出会った彼とは、仕事が忙しい事を言い訳にこっちから連絡をしていなかったら、あっさりと音沙汰なし状態になってしまった。
付き合い始めこそ盛り上がっていたが、振り返ればこの半年でデートした回数は両手で足りる程度かもしれない。土日も関係なく仕事を優先してきた結果がこれだ。
今回だけじゃない、今までだってずっとこんな感じだった。
―32歳にもなって、彼氏と自然消滅なんて、何やってんだろ・・・
でもなぜか、プライベートが上手くいかない時ほど、仕事では面白いほど評価される。
課長に昇進できたことは、顔がにやけてしまうくらい嬉しいのに。
真剣に結婚を考えられるような男性と付き合えていないこの現状に対する焦りが、喜びに水を差すのだ。
今まで、決してモテなかった訳ではない。顔だって、美人だと褒められることもある。
仕事が面白くて、この年まで仕事中心の生活をしてきた。
でも、決して結婚を諦めている訳ではない。
もはや夢物語にも思えてくるが、近いうちに自分の仕事を理解してくれる男性と巡り合って、いずれは子供も産みたいと思っているのだ。
―恋愛って、どうやって頑張るんだっけ?どうやったら結婚できるの?
仕事についてはやるべき事がクリアに分かるのに、恋愛のことになると何をどうやって頑張ったらいいのかさっぱりわからない。
脳裏には、数ヶ月前に母親が勧めてきた結婚相談所のことがぼんやりと浮かんでいた。
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