上質な肉を軽く炙って塩とわさびで…。昨今こういった高級焼肉店が増えてきた。
確かに美味しいし、ワインも進む。しかし、しっかりとタレで味付けされた肉を焼いて食べる焼肉も捨てがたい。
そこで今回は、上質な肉をタレメインで食べさせてくれる西麻布の名店『誇味山』を紹介したい!ワインじゃなく、白米を合わせたくなるタレ焼肉をご堪能あれ!
タレ焼肉の良さを再認識させる西麻布の名店『誇味山』
昭和の焼肉といえばタレ。それが常套だった。
牛のロースやカルビを甘辛いタレにつけ、無煙ロースターで焼いて食べる。このスタイルに変化が訪れたのは、今から十数年ほど前のこと。希少部位ブームが席巻し始めた頃からだ。
それまでは、ホルスタインなどの安価な肉が主だった焼肉店が、こぞってブランド牛を扱うようになったり、牛の一頭買いをする店が現れたりしたことが、タレではなく塩で味わうスタイルを持て囃すようになってきた理由のひとつだろう。
そう、つまりは、焼肉業界において牛肉の質がぐんと向上したことで、部位ごとに異なる肉の持ち味をストレートに味わいたいという思いも強まり、「上質の肉にタレをつけて食べるなんてもったいない!」そんな風潮が生まれてきたのではないだろうか。
そして、今、その流れに一石を投じたのが込山秀規さん。その名を聞いて、もしや? と思った方はかなりの焼肉通。
ご明察通り、今やレジェンドとも言える焼肉店『ら・ぼうふ』の店長を務め、予約の取れない人気店『コソット』を立ち上げた人物だ。
惜しまれつつ、一時は焼肉業界を引退したものの、焼肉愛がフツフツと胸に沸き起こり、2019年1月に念願の復活を果たした。
西麻布にオープンした焼肉『誇味山』がそれだ。以前とは異なり、今回はおまかせコースのみで勝負している。
「焼肉は、やっぱりタレが美味しいなと、最近、また思い始めてね。僕自身が白飯を好きだからなんですが、焼肉はやっぱりご飯と食べたい。だって、タレと肉とご飯、この組み合わせが一番美味い。最強ですよね」
そう語る込山さん。その言葉に違わず、今、コースで繰り出す焼肉は、どちらかといえばタレ中心。そのタレ使いが絶妙なのだ。
聞けば、「ベースのモミダレに、その時々の肉の部位や肉質、出す順番などを考えながら、配合を少しずつ変えたり、コチュジャンやニンニクを入れて辛くしたりと微調整している」そうだ。
例えば、サシの入ったサーロインはやや甘めのスタンダードな味付けに対し、ミスジはコチュジャンを加えてやや辛めに。
一方、赤身系のうわミスジは山葵醤油のタレ等々、変幻自在。いずれも、肉の味を損なわぬギリギリのところの味付けが見事。肉の状態はもちろん、お客の好みなどを見極めながら5種類以上のタレを匠に使い分けていくのである。
牛は『コソット』時代と同様一頭買い。それも、業者任せにせず自ら芝浦まで出かけ、選別する熱心さだ。銘柄にこだわりはないものの「A5の処女牛と決めている」という。
内臓類も含めざっと12~13種を楽しめるコース(1人前15,500円~18,500円)は肉好きを唸らせる充実ぶり。
終盤にさしかかると、タレ焼肉の余りの美味しさにご飯をどうしても食べたいという要望もあるという。そんな人には、食べきりサイズのライスを用意してくれるのも嬉しい限り。
この日は「ハラミ」をライスにのせて、味わわせていただいた。
白いご飯にタレがしみ込み、肉の旨みとご飯の甘み、それら全てを一緒に口に運ぶ幸福感は何者にも代えがたい。
肉は全て込山さんが焼いてくれるというのもありがたい。
サンチュに包んで味わう「ヒレとリブ芯(※部位は日により異なる)」も、焼き上げた後、具材と共に包んでから手渡し。
至れり尽くせりのサービスに、普段はめっぽう焼き係という男性も心ゆくまでタレ焼肉の美味しさを堪能できるはずだ。
『誇味山』を訪れる人の最後の楽しみとなっているのが〆の一品だ。なんと同店では、2種の〆を味わうことができるという。
一品目は「すだち冷麺」。鶏出汁をベースに、込山さん独自のアレンジを加えたスープにすだちの香りと酸味がマッチし、タレ焼肉を味わった後、さっぱり締めたい時に最適の一杯に仕上げられている。
続いて運ばれてくるのは「坦々つけ麺」。味の決め手となっているのは濃厚なつけだれ。
牛スジスープとスネやネックでとったブイヨン、魚介、とんこつと3つのスープを合わせて仕上げられており、満腹のお腹にもするすると収まってしまうほどの美味しさである。
店内に入った瞬間に、人の本能を刺激するような食欲そそるタレ焼肉のいい香りが漂い、最初から最後まで“タレ焼肉”の美味しさを改めて感じさせてくれる名店『誇味山』。
今夜は焼肉が食べたい!と思ったならば同店を訪れてみてはいかがだろう?
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