2019.10.14
偽装婚活 Vol.1僕は御三家とよばれる、とある中高一貫校(男子校)を卒業し東京大学理科Ⅰ類へ入学した。同じ高校から100人超が東大へ進学するので、人間関係はたいして変わらない。
相変わらず気の置けない仲間といえば中高時代の5人組だったのだが、当時僕らは横一線で、恋愛経験ゼロだった。
そこから1人が抜け出し彼女を作ったとき、僕はいち早く察知した。
―今だ!今、策を打たなくてはこの集団の中で平均以下となってしまう…。
そして僕は強みである東大というブランドを最大限に活かすことのできる、とある女子大に的を絞り見事射抜いた。
―彼を知り、己を知れば百戦殆うからず。
そのとき僕の胸の内に湧きあがった感情といえば、孫子の名言を具現化したことへの喜びだろうか。
「優作~結婚なんて人生の墓場だよなぁ」
ふいに都築さんに名前をよばれ、肩を抱かれた。すっかり出来上がってしまっている。そして言葉とは真逆の表情を見せるのだ。
その表情を見たとき、思い出した。あのときの2人と同じ顔だと。
その2人とは「彼女ができた」そう仲間に報告したときの、恋愛経験済みの2人。結局、僕は5人組の中で3番目だった。
―ちょうど真ん中だな。
そんな感想を抱きつつ2人がいる向こう岸へ渡っていく僕。
「恋、してーなぁ…」
残された2人の、夜空に祈るかのようなつぶやきを僕はそのとき背中で聞いていた(ような気がする)。
「優作~お前にもようやくチャンスが巡ってきたなぁ」
「へぇ、そうなんですかぁ」
僕はすっかり意識がこの場から離れており、意味不明な受け答えをしてしまう。
―あん?チャンスってなんだ?
「なんだよ、他人事だなー。栃木から大手町への異動、よかったじゃないか。下山だな」
―おいおい、栃木に失礼だぞ。
僕は大学院を卒業してから大手機械系メーカーに技術職として就職が決まり、先日まで栃木の山奥(と皆が表現する)で研究・開発に勤しんでいた。
成城に実家がある僕としては、確かに田舎は田舎だが、研究に励むのにははそう悪くもない。しかし東京の便利さに慣れきった男どもは格好の話のネタとして栃木勤めをディスるのだ。
「まあ、栃木も悪くなかったですけどね。でもずっとロボットやりたかったんで、その部隊に異動できるのは喜ばしいですね」
そう、1年前にロボット部門のみ丸ごと大手町に研究所を移設したので、専門がロボットだった僕は大手町勤務を志願していたのだ。都築さんのノロケ話ですっかり忘れていたが、今日の飲み会の大義名分は異動祝いだ。
「いやいや、それはそうと大手町?丸の内?といえばOLだろう。優作にもやっと春が。下山とともに雪解けか?」
ヘラヘラ笑う都築さんに僕は苦笑いを返す。
―おっさん、偏差値いくつ下がったんすか…。
僕は心の中でそう呟いていた。
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