ミーハー女 Vol.3

「可愛い子としか友達にならない」。女同士の薄っぺらな“友情ごっこ”の実情

入社式で初めて会った時から、ミハルは祐里奈と仲良くしている。

一緒に仕事をしたことはないが、入社当時は祐里奈と仲良くしているとみんなから羨ましがられ、それが少しだけ嬉しくもあったのだ。ただ最近は、祐里奈のある所に少しずつ違和感を覚えるようにもなっていた。

ーよく祐里奈ちゃんと仲良くできるねー

ミハルに対して、そんなことを言ってくる同期もいる。だが、ミハルはそんなセリフを言われる度に「本当はいい子なんだけどね」と言葉を濁すようにしている。

ーよく言えば正直で天真爛漫。悪く言えば…

祐里奈の横顔をちらりと盗み見ながら考えていると、唐突に祐里奈が切り出した。

「で、ミハル。最近どうなの?」

駅から歩く道すがら、祐里奈は大きな瞳をキラキラさせながらミハルに聞いてきた。

「う〜ん。こないだの食事会の商社マンとデートしようとしたんだけど..」

「うわ!やっぱりあいつミハルにいったかぁ〜。ミハルもあの彼もすらっとしてて背が高いから、隣に並ぶとお似合いだよ!」

「それがさ...、結局デート、ドタキャンされちゃって」

先日の”映画すっぽかされ事件”を話すと、祐里奈は言葉をかぶせるように言い放った。

「え、なにそれ!ムカつく、絶対そんなやつやめといたほうがいいよ。ミハルにはもっといい人いるって!」

「ただね、初めてあんな風にドタキャンされて、ちょっと反省したことがあって...」

ミハルが少し真剣な話をしようとすると、祐里奈は食い気味に相槌を打ってきた。

「え〜ミハルは何も悪くないよ!」

「でも...」

「あ!そう、これこれ〜!外観もオシャレ〜!」

ミハルの言葉を遮るようにして、祐里奈が指さしたのは『カシヤマ ダイカンヤマ』だった。


ミハルの話をよそに、スタスタと店内に入っていく祐里奈を見て、ミハルは寂しい気持ちになった。

おしゃれで可愛くて、いつだってスクールカーストの頂点にいるような祐里奈は、根っからの女王様気質なのだ。

ー全部が自分中心に回ってても、仕方ないのかな...。

「インスタで見てから、ずっと来たかったんだよね〜!ねねね、写真撮って!」

席に通されると、祐里奈はいつも通り、スマホをミハルに手渡してきた。

「は〜い、いくよ!3、2、1!」

「見せて見せて、ん〜。もう一回!」

カメラを見つめる祐里奈の目は、いつもあまり笑っていないように見えて、ミハルは祐里奈が本当は何を考えているのか、よくわからないと思うことがある。

写真撮影がひとしきり落ち着くと、2人はシャンパンとカヌレを注文した。

「そういえば、祐里奈は彼氏とどうなの?」

ミハルが聞くと、祐里奈は持っていたシャンパングラスをテーブルに置いて、スマホ画面を見せてきた。

「うん、仲良しだよ。彼、最近起業したから仕事が忙しいみたいだけど、この前の休みは一緒にバリ行ったの〜!ホテルがめちゃくちゃ綺麗だった!見て〜!」

写真に写る笑顔の祐里奈と、その隣には端正な顔立ちの男性。男性の手に光るパネライの時計と、ルイヴィトンのバッグ。

「祐里奈はさ、本当にお金持ちのイケメン大好きだよね」

嫌味でもなんでもなく、思ったことをつい口にすると、祐里奈はいつもの笑顔でこう言った。

「うん、見た目ってすごく大事だと思うんだよねー。中身よりも大事かも」

「私も、それに近い考えだった時もあるけど…。でもさ、それだけで彼氏選ぶのって、なんか違うかなーって思うようになってきたんだけど、祐里奈はどう思う?」

ミハルは匠に言われたことを思い出しながら、祐里奈に恐る恐る問いかけた。すると彼女は少しだけ首をかしげて「う〜ん、どうだろうね?」と言った直後に、運ばれてきたシャンパンとカヌレを見るなりまた高い声を出した。

「あ、来たよ!美味しそ〜」

そして、すかさずスマホを取り出してストーリーズの撮影を始めるのだった。


-どうしていつも、こんなに雑に扱われるんだろう...。

「祐里奈って、時々何考えてるかわからないっていうか、なんかすごくドライだよね。結構オープンな性格かと思えば、実はあんまり自分のこと詳しく話してくれないし。なんか、いつまで経っても壁があるっていうか。すごく近くに感じることもあるけど、すごく遠くに感じることの方が多いっていうか…」

思い切ってミハルが質問をすると、スマホに夢中だった祐里奈が目を上げた。

「ていうか、逆にミハルってすごいよね」

「え?」

「いつも自分のこと、よくそんなにベラベラ話せるなぁって思うんだよね。だってさ、自分の悩みとか、友達に相談しても何の意味もないじゃん?友達なんて、正直言うとどこまでいっても他人なのかなって思ってるんだよね」

目の前に置かれたカヌレを頬張りながら、何の悪びれる素振りもなく話す祐里奈の姿に、ミハルは少し胸が痛んだ。

-私って、”他人”だったんだ。

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