マルサンの男 Vol.7

「彼、物足りなかったの…」たった2年で離婚を決めた夫婦。女が、他の男に走った本当の理由とは

「他に気になることがあったら、遠慮なく何でも聞いてよ」

ほのかにそう言われ、南美は勇気を出して色々と聞いた。

まずはクアラルンプールのこと。

数也がクアラルンプールに出張を決めたとき、当地に移住したほのかはSNSに「久々に大事な人と会う」と書き込んでいた。南美が数也を疑いだしたきっかけだ。

ほのかは笑いながら答えた。

「数也君もクアラルンプールに来てたの?」

「はい。実は、不安で私もついていってました」

「あっ!それで私のトークイベントに?」

「言いにくいんですけど、そういうことなんです…」

ほのかはさらに笑った。

「誤解よ、誤解。数也君がクアラルンプールに来てるなんて知らなかった。『大事な人』っていうのは女友達。シドニーに住んでる日本とオーストラリア人のハーフの子」

数也がランチミーティングしていた店に、ほのかも来店してランチしていたことが彼女のSNSから発覚していたが、それもやはり偶然で、別日の出来事だった。

「あと、数也さんの最初の奥さんの竹中桜さんから聞いたんですけど」

「えっ、ウソ!」

ほのかは目を丸くさせる。

「南美ちゃん、最初の奥さんとも会ったの?」

「はい。つい、この前…」

「最高!私、南美ちゃんのこと大好きになった!」

屈託なくほのかは笑った。

「それで最初の奥さんから何を聞いたの?」

「ヒラキマホって女性のことです」

「ヒラキマホ…?」

竹中桜によれば、数也は学生時代からマホと付き合っており、結婚後も関係は続いていて、それが離婚の直接的な原因となっていた。

「ヒラキマホって人のことなら、私も聞いたことがある」

「ほのかさんも?ホントですか?」

「数也君が学生時代に、その女の人と付き合ってたのは事実だと思うけど、ただの元カノだと思う」

ほのかが知っている情報では、竹中桜は数也と離婚する前に、拝金主義的な占い師にハマってしまっていたらしい。桜は、その占い師から不幸なことを吹き込まれ、何度も足を運んでいたようだ。

そのうちのひとつが「数也には学生時代から付き合い、結婚後も関係が続いている女がいる」ということだった。

「だからヒラキマホというのは、最初の奥さんのただの被害妄想」

「そうだったんですね」

安堵した南美の声は弾んでいた。

「だから数也君はいつも言っていた。『占いに行ってもいいけど、行く時はちゃんと教えて。相手が金目当ての占い師かどうか調べるから』ってね」

「そういうところも、なんか数也さんらしい」

「そうね。数也君は相手のことを絶対に否定しないから」

南美が抱いていた疑念はこうして、窓の外に広がる青空のように、すべてが晴れていった。


「また必ず会いましょうね」

帰り際、ほのかがそう言った。

「今の南美ちゃんのように、これからもずっと…数也君のことを気にかけ続けてほしい」

結婚を考えている相手の元妻にこっそり会う、という炎上必至のような南美の行動を、ほのかは認めてくれた。

「私はそれが出来な......


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